会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 及川鉄工 早く、奇麗に、安全に

2021年02月24日 12時00分

「職人団」で業界活性化したい

 及川鉄工(本社・札幌)は、建物の床を作るためのデッキプレート(構造・型枠用鋼製床板)の専門工事会社。設立は1962年で、さっぽろ創世スクエアやJRタワーなど道内の大型物件に多く関わった。堤清丈社長は3代目に当たり、「早く、奇麗に、安全に」をモットーに日本一のデッキ屋を目指す。職人による職人のためのコンサルプロジェクト「職人団」を立ち上げるなど、職人としての自己実現や専門工事業者の存在感を高める活動にも前向きだ。

 及川喜一氏が設立した。当初は、らせん階段や手すりなど建築金物を作るのが仕事だった。その後、72年の札幌五輪を契機に街の再開発が進み、事業はデッキプレート施工が中心になった。

3代目の堤社長

 堤さんは65年生まれ。高校卒業後はミシン会社で3年ほど務めたが、辞めてハードロックバンドのボーカルに没頭。金色の髪をなびかせ、廃品回収や鉄筋工の仕事をしながら食いつないでいた。見かねた母が近所の知人に相談し、及川鉄工の面接を受けることになった。

 対応してくれたのは当時常務だった余語七男さん。バンドマンだったことに気を遣ってくれたのか、ジャンル違いの札幌ケントス(オールディーズ系ライブハウスレストラン)で熱い指導を受け、まずは現場に顔を出すことにした。

 「定職に就かずフラフラしていた自分に、余語さんは〝あんたは母親のスネをかじる人間のクズだ〟と言い放った。〝こんな会社、絶対に行くものか〟と思ったが、親の顔もあって行くことにした」と述懐する。

 初めての現場は土砂降りの雨で、高所恐怖症だったこともあって完全に戦意を喪失した。だが「借りてるクレーンがもったいないから」と情け容赦なく作業は決行。23歳の初戦は苦い経験となった。

 「仕事はキツかったが、工事部長だった小松彰さんをはじめ、みんな良くしてくれた。〝ツーちゃんは人が見てても見てなくても一生懸命やってるもんな〟と言われたことがうれしく、ずっと続けたいと思った」と振り返る。

 89年に及川社長の娘婿だった葉原隆さんが2代目に就く。もともと産業用ガスメーカーで勤めていたこともあり、専門工事会社では珍しい月給制や社会保険加入を進めた。従業員を安心させて働かせたい―という思いからだったという。

 2012年の設立50周年のとき、葉原さんとの2人代表の下、堤さんは3代目社長に指名された。「初年度決算は1500万円の赤字で、寝られない日々が続いた」。当時は08年のリーマンショックの余波が残り、加えて民主党(当時)による政権交代の影響もあって、建設業界は強い逆風にさらされていた。専門商社の知人に本州の仕事を紹介してもらいながら辛抱した。

 13年以降のアベノミクスで業況は徐々に回復し、ここ数年は売上高2億円強で推移する。しかし人件費や材料費の上昇から、利幅は年々薄くなっているという。

 現在は小松彰さんの息子・雄二さんが取締役工事部長になり、堤さんの片腕として会社を引っ張る。彰さんは41歳の若さで他界し、当時17歳だった雄二さんを余語常務が「うちに来い」と誘ったのがきっかけだ。設立当初からの及川鉄工のDNAは今も受け継がれている。

早く、奇麗に、安全にデッキを敷くのが及川鉄工の流儀

 最近はミャンマーの技能実習生を受け入れるなど、人材育成に積極的だ。職人団プロジェクトを立ち上げ、全道の職人ネットワーク実現に向けても活動する。

 「自分たち自身が充実して喜びを持って仕事すれば、人に喜んでもらえる社会貢献につながる。職人同士をつなげ、業界を活性化したい」と話している。

(北海道建設新聞2021年2月22日付3面より)


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