深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り ファイバーゲート 猪又将哲社長

2021年03月12日 15時00分

猪又将哲社長

「ホームIoT」モデルを

 賃貸住宅や商業施設向けのWi―Fi設備の開発、運用などを手掛けるファイバーゲートが2月、不動産事業の100%子会社「FGスマートアセット」を設立した。土地・建物の売買、運用などを幅広く展開するという。設立の狙いやグループでの相乗効果について、猪又将哲社長(56)に尋ねた。

 ―子会社では何をやるのか。

 本体のファイバーゲートは最近、スマートキーやエアコン遠隔制御といったホームIoTに力を入れている。こうした技術をフルに導入した理想の賃貸住宅を、自分たちで開発したいというのが大きな目的だ。

 これまでは不動産オーナーや管理会社の協力で住宅に設備を取り付けてきたが、例えば当社の意向で壁に穴を開けるわけにはいかない。設計段階から企画を反映させて、ホームIoTのモデルになる建物を造ろうと考えている。エリアは今のところ首都圏や関西を想定している。

 また、不動産仲介もやるつもりだ。当社は日頃多くの不動産会社や住宅メーカー、物件オーナーとお付き合いしているため、物件売買の情報も早く入ってくる。これを事業化したい。

 ―情報通信分野の御社にとって、不動産は専門外ではないか。

 当社の副社長で新子会社の代表を務める松本泰三が宅地建物取引士資格を持っていて、不動産業界にネットワークがある。そもそも当社は建物に関わるビジネスのため、不動産の知識やノウハウは営業の提案力アップにもつながる。社員の中には宅建など不動産関連資格の勉強を始める者も出てきた。

 ―IRによれば最近は住宅向けの売上高が特に好調。コロナ禍が追い風になっているのか。

 「無料でネット使い放題」の賃貸住宅が増えているからだが、コロナが理由だとは思わない。以前から、ネット無料の物件に一度住んだ人は引っ越しても同じ環境を求める傾向が強い。今や大都市部の賃貸住宅オーナーにとってWi―Fiは、なければ入居者を逃す、欠かせない設備になってきた。

 ―自室に市販の無線LANルーターを付ければ十分と考える入居者も多いのでは。

 詳しい人はそれでもいいが、お金がかかる上、設定を自分でできる人ばかりではない。建物自体に設備が備わっていれば、当社が遠隔管理することもできる。速度やセキュリティーの面でも住人の安心感は高い。

 ―このところ高速大容量通信の5Gが広がりつつある。いずれWi―Fiは不要になるのでは。

 そうはならないだろう。5Gは確かに高速大容量だが、これはスマートフォンなどの通信機器と基地局アンテナとの間に限った話だ。世界でインターネットを構成しているインフラは従来光ファイバーで、スマホと基地局の間だけ5Gにしてもネットの使い心地はあまり変わらない。その割に、5Gは費用がかなり高い。安価なWi―Fiの需要が縮小するとは考えにくい。

 街中、観光地などでの無料サービスを含めて、Wi―Fiのコストの低さは、人々が支払う通信費を抑えることに貢献する。その分が他の支出に回って経済を活性化するという意味でも、果たす役割は大きい。

(聞き手・吉村 慎司)

 猪又将哲(いのまた・まさのり)1965年2月愛知県生まれ。87年北大経済学部卒業後、大手損保会社勤務を経て通信業界に転身。2003年11月、ファイバーゲート代表取締役に就任。

(北海道建設新聞2021年3月11日付2面より)


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