生活や産業再生途上 東日本大震災10年

2021年03月11日 14時00分

3.11が伝えた教訓 地震・津波防災、節目の年

 東日本大震災の発生からきょう11日で10年になる。マグニチュード(Mw)9の東北地方太平洋沖地震を発端としたこの震災では、巨大な津波が沿岸のまちを飲み込み、多くの命と生活を奪った。さらに東京電力福島第1原子力発電所で原子炉がメルトダウン(炉心溶融)を起こし、放射性物質が漏えいする深刻な事態に陥った。被災地の復興は10年間で相当進んだが、住民生活や産業の完全な再生にはまだ時間を要する。そして、震災を教訓に取り組むべき国内の地震・津波対策も道半ばだ。大惨事を繰り返さないためにも、地震・津波防災の在り方をあらためて考えなければならない節目の日だ。(東日本大震災から10年取材班)

 東北地方太平洋沖地震の発生は2011年3月11日午後2時46分。最大震度は宮城県栗原市で観測された震度7で、東北、関東の8県で震度6弱以上を観測した。沿岸各地には津波が押し寄せ、福島県相馬市では最大波9・3m以上に。浸水面積は561平方㌔に及んだ。

 津波の影響で原子炉が冷却不能になった福島第1原子力発電所は、原発事故としては最悪のレベル7(深刻な事故)に分類された。また、東北から関東の広い地域で液状化現象が起きたほか、広範囲でインフラやライフラインが寸断されるなど甚大な被害になった。

 震災による死者は1日時点で1万5899人、行方不明者は2526人。災害関連死も3000人以上に上る。住家全壊は12万棟を超えている。

 復興のため、政府はこの10年間で31兆円余りを投入。高台での宅地造成や災害公営住宅といった住宅再建、学校や病院施設の復旧などはおおむね完了。交通網も20年3月にはJR常磐線が全線開通、三陸沿岸道路(復興道路)は21年度中の完成を目指す。

 一方で、福島第1原子力発電所は廃炉が決定しているものの、30―40年の期間を要する。汚染水や汚染土の処分など問題が山積する。さらに、被災地では人口流出が進んで、今後のまちづくりに影響をもたらしているほか、根深い風評被害がある中で産業再生も大きな課題になっている。

 仙台建設業協会の深松努会長は、この10年間を振り返り「最近感じるのは、多くの人は自分が生きている間に、自分がいる場所で大災害が起こるとは思っていないということだ」と警鐘を鳴らす。「首都直下地震や南海トラフ地震は近い将来必ず発生する。今、最も重要なのは、大地震が起こった時にどう行動するか、関係機関が平常時から決めておくこと」と強調する。

 震災を踏まえ、同建協では仙台市と避難所の応急危険度判定、放置車両の移動、災害廃棄物の処理など具体的な行動計画を盛り込んだ災害協定を締結。また、静岡県の浜松建設業協会と災害時相互援助協定を結んで、広域連携を構築した。

 未曽有の大災害は今も、被災地に深い爪痕を残している。同様の惨事を繰り返さないためにも、10年前の恐怖を忘れることなく、平時からの備えと国土強靱化の着実な取り組みが求められる。

 北海道建設新聞2021年3月11日付3面、同4面では、道内における官民の多彩な防災の取り組みを紹介しています。

 また、12日付からは「3.11が伝えた教訓~東日本大震災から10年」として、道内の地震・津波防災などをテーマに4回連載します。閲覧は新聞本紙か、e-kensinプラスの記事検索コーナーをご覧ください。


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