胃もたれ、下痢などおなかの不調があるときに、消化のいいものとしておかゆを選ぶことが多いと思います。白飯より水分を多くして、柔らかく炊くので、消化にいいと考えるわけです。そもそも消化という言葉には、食べ物が胃腸の中で消化酵素により化学的に分解されて形が崩れ流動化するという意味が含まれています。白飯をあらかじめ流動化したのがおかゆなのですから、消化すること自体短時間で済んで、胃腸に負担をかけないのではないかと考えるのは、一つの道理です。というわけで、おかゆは病気のときに食べるもので、病院食としてもおかゆが選択されることが多いのです。しかし、本当にそうなのでしょうか?
一方、最近、おかゆはむしろ消化によくないと主張する人たちも出てきました。いわく、おかゆはすぐにのみ込めるため、ほとんどかむことがなく、米粒が細かくならないので、消化が進みにくい、というのです。確かにかまずに丸のみは、消化に悪そうです。しかし、全くかまないというのは、あまり考えにくいところです。
実際に消化がいいかどうかは、食べたものが、胃の中でどのくらいの時間滞留するか、ということで測ることができます。食べ物は胃に滞留している間に、胃液の作用によって消化が進み、流動化して腸へ進むようになっているからです。平均的な滞留時間は、おかゆが2時間、白飯で2時間半と報告されています。30分ほどの差がどの程度意味があるのか、微妙な感じですが、思ったほど時間差がないのです。
消化に関してはおかゆと白飯は同程度とみなして差し支えなく、胃腸への負担も同じ程度と考えていいでしょう。ならば、おかゆを病気のときにことさらに食べる理由はなくなります。
具合が悪いときや食欲が落ちたときに、おかゆを選ぶ理由は、のど越しにあると思われます。白飯を少しずつ食べても、ある程度の塊をのみ込むことになりますが、おかゆなら少量ずつ、すっとのみ込めます。具合が悪いときにも、食は取らなければいけませんから、おかゆの方が入りやすいということなのかもしれません。
とはいうものの、おかゆ自体が苦手な私は、どんなに具合が悪くても、白飯を選びます。お米がどろどろというのは、どうしてもなじめないのです。でも、消化は問題なさそうです。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)