3.11が伝えた教訓 東日本大震災10年

 10年前の東日本大震災は、世界中に大きな衝撃を与えた。

 マグニチュード(Mw)9の巨大地震が引き起こした津波は多くの犠牲者を出し、福島第1原子力発電所の深刻な事故をもたらした。関連死を含め死者2万人近くに上る戦後最悪の災害だ。この震災は日本が地震大国であることを再認識させ、併せて、災害対策の不十分さも露呈させた。

 海溝型地震が現実的な確率で示されている本道。「3・11」を忘れず、その教訓を生かすことが求められている。(東日本大震災から10年取材班)

3.11が伝えた教訓 東日本大震災10年(2)太平洋側で津波対策強化へ

2021年03月19日 12時00分

防災無線、沿岸住民避難に不可欠

 東日本大震災の津波は道内にも太平洋岸を中心に襲来。日高管内のえりも町では庶野地区で最大3・5mの津波を観測した。国道336号への冠水や、川への逆流による地面の隆起など多くの被害が出た。被災時、町民の情報源になるのは防災無線。町は全道で進む防災無線デジタル化に合わせ、拡声器を増やすなど対策を強化している。

えりも町には道内最大となる3・5mの津波が押し寄せた
(えりも町提供・11年3月11日撮影)

 石川慎也企画課長は「漁港の様子を見に行って、住民に避難を促した」と振り返る。しかし職員の命を考えると「今は津波が予想されているところへ直接足を運ぶことは難しいだろう」と話す。最大級の津波には役場庁舎も飲み込まれるエリアにあるため、職員も避難を余儀なくされるからだ。

 そんな中、沿岸部で漁業者が多く、被災の可能性が高いこの地域では、避難の呼び掛けに無線が不可欠。2021年度内に予定している防災無線デジタル化では、いくつかの避難所にも無線親局を新設し、避難先からの放送を可能にする。

 標高43mの高台に建ち、津波の被害を受けない数少ない町有施設とされるえりも高では、コロナ禍での避難生活も見据え2月から水くみ上げポンプ稼働などのため自家発電機導入に着手し、備えを進めている。

 胆振管内の苫小牧市も津波に対する対策を加速させている。市は11年度以降、民間事業者らと津波一時避難施設に関する協定を結び、万一の際は民間事業者の社屋屋上などに市民が避難できる仕組み。

 これまでに民間15施設と協定を結び1万5054人を収容可能に。市有施設などを含めると、69棟、3万4784人分の避難場所を確保した。

 道東の釧路市では、最大2・1mの波が港湾施設や河口部・沿岸部に押し寄せた。最も被害を受けたのが、釧路川河口に位置する釧路フィッシャーマンズワーフMOO。

 津波の高さは床上20cmにとどまったものの、MOOにある地下のボイラ室や電気室が水没し機能を喪失。仮設設備で翌月営業を再開したが、同年夏には本格的な対策として電気室を上層階へ移設し、地下への浸水を食い止める防潮板やコンクリート壁の設置などを進めた。13年度には5階の旧フィットネスセンターを改修し、800人収容可能な津波一時避難施設を兼ねた多目的アリーナも設けている。

 MOOから直線距離で350mの位置にある市役所本庁舎は浸水こそ免れたが、やはり地下に電気室があり機能喪失の危機に直面していた。

 そこで13年度から2カ年かけ本庁舎隣接地にRC造、5階、延べ7195m²の防災庁舎を建設。2階と3階の間に免震層を設け、最上階に電気室や発電機室、災害対策本部室、会議室、4階にホールや避難者用シャワー室などを配置した。本庁舎の電気もここから供給する。

 平常時は福祉部やこども保健部、防災危機管理課などの執務や会議に活用。発災時は避難者を受け入れつつ、災害対策本部や保健師派遣、要支援者対応、罹災(りさい)証明書発行、物資の受け入れ・供給拠点として機能する。

 これら3市町の取り組みは、いずれも津波の被害をゼロに押さえ込もうというものではない。しかし限られた予算と人員の中で、なるべく多くの人命を救いつつ非常時に行政として最低限の機能を維持する体制を整えていくには、今後もこのようなポイントを絞った対策が重要になる。

(北海道建設新聞2021年3月13日付1面より)


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