ここ数年、「プロテイン」がひそかなブームを呼んでいると聞きました。プロテイン入りと銘打った補助食品も多く売られています。肥満の原因になると敬遠されがちの炭水化物の代わりにプロテインを多く取ると、必要なエネルギーは確保されるけど、太らないという考えの人が多いそうです。一方、筋肉を鍛え、フィットネスをしようとするアスリートやボディービルダーたちは、筋肉の原料となるという理由で、より積極的にプロテインのパウダーなどを摂取しています。また、コロナ禍で「ステイホーム」を行っている人たちが、運動不足による肥満を警戒して取るようになり、ブームを支えているとも聞きます。そこで、プロテインについて考えてみました。
プロテインといわれるものは、通常、パウダー状になっていて、これを牛乳や他の食べ物と混ぜたりして摂取します。また、プロテイン入りのバーなどが販売されていて、これを食べる方法もあります。
そもそも、プロテインは英語でタンパク質を指す言葉です。タンパク質は、糖質、脂質と並んで三大栄養素と呼ばれ、体を作り、維持するための重要かつ不可欠な栄養素です。肉や魚などに豊富に含まれているので、体を鍛える人たちは、それらを好んで食べていました。
しかし、肉や魚には脂質も多く含まれていて、脂質も多く取ることになり、体脂肪が増えるという危険性がありました。そこで、食品からタンパク質だけ抽出して粉末にしたものをプロテインと呼んで、特に筋肉を肥大化させるのに利用してきたのです。
さらに、タンパク質は体の中で分解され、アミノ酸になりますが、このアミノ酸がエネルギー源としても利用できるので、炭水化物を減らしてタンパク質を増やすと太りにくい体になると、ダイエットの方法にも利用されるようになっているという訳です。
通常の肉や魚からタンパク質を取っている分には、さほど問題にはなりませんが、プロテインとして大量に摂取すると、腎臓に負担をかけることが分かっています。特に高血圧や腎臓病などの既往のある人は、大量摂取は避けるべきでしょう。炭水化物を避けてタンパク質を取るのは、牛乳、納豆や豆腐といった大豆製品、鶏肉のささ身などでも達成可能なので、プロテインの大量摂取は避けた方が得策です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)