札幌など 宅地不足深刻
国土交通省が公表した1月1日時点の地価公示で道内は5年連続の上昇となった。しかし、新型コロナウイルスの影響から一部地域では不動産ニーズが滞り、伸び率は縮小している。道内不動産業者が会員の8割を占める北海道宅地建物取引業協会(本部・札幌)の伊藤一三会長に、コロナ禍による不動産の影響や同協会が抱える課題などを聞いた。
―コロナ禍の影響は協会内で出ているのか。
影響があるとは見ておらず、不動産取引は活発に動いていると聞いている。それ以上に一番のネックが札幌や近郊の北広島、恵庭、千歳で宅地不足の問題が深刻化していることだ。将来、人口は止まるという予想から、札幌圏では市街地を広げないという流れがあるが、実際には人口は増えている。新型コロナの影響で建築が滞っていると聞くが、これは宅地不足が原因になっているのではないか。
リモートワークが広まり、戸建て住宅の需要が出ている。それなのに土地を供給できないのは切ない。建築会社同士が土地の取り合いになって、価格が上昇する悪循環にならないか危惧している。
―既存住宅の流通は。
建て替えやリフォームをして再販できる物件があったとしても、所有者にたどり着かず放置されているケースが多い。相続したとしても登記をしない人もいるのが現状だ。所有者との交渉を行政がうまくやってくれれば既存部分で宅地供給できるし、再販もできる。
しかし個人情報がネックとなるなど今の制度ではなかなか難しい。見直しを求めるよう全国宅地建物取引業協会連合会には要請している。空き家・空き地対策としても一緒にやっていければいい。市街地が拡大しないなら、今あるもので流通させるしかない。スムーズに苦労なく手続きなどができるシステムになってほしい。
―地価公示では北広島市の上昇率が他地域よりも高かった。ボールパーク(BP)の影響か。
地元の建築会社や不動産会社の話では、BPができるからといって、北広島での宅地開発に力を入れるという状況にはまだなっていないと感じる。動きがあるとすれば投資目的が考えられる。
―最近の住宅事情を。
地域によって違うが、札幌は土地が高く、住宅用地が少ないことから注文より建て売りが主流となっている。その半面、郊外は依然として注文住宅が人気だ。時代とともに二極化している。それでも最近は千歳で住宅用地が無くなっていて、面積を小分けにして売り始めた。今後、札幌と同じような状況になるのではないかと注視している。
―道宅建協会で力を入れている取り組みは。
北海道版のハトマークグループ・ビジョンの見直しを4月から本格的に議論する。これは、地方行政の協力を得ながら住民に対して不動産関連の支援・相談などの取り組みを通じ、業界全体の信頼を将来にわたって得ることが目的となっている。近年、道外からの大手不動産事業者の進出が後を絶たない。大手ができない地域の実情に合わせた取り組みや課題解決をすることが、運営を継続することにつながる。
30―40代の会員に、地方の不動産業者の在り方を議論してもらっていて、外部のコンサルの支援を受けながら12月までにはまとめようと思う。新たな時代に即した内容を盛り込みたい。
(聞き手・武山 勝宣)
伊藤一三(いとう・かずみ)1950年生まれ、秋田県大館市出身。71年に陸上自衛隊少年工科学校(現・高等工科学校)を卒業し、自衛官、不動産会社勤務などを経て96年に一成不動産(本社・千歳)を設立した。2008年に北海道宅建協会理事、18年に副会長を経て20年から会長。
(北海道建設新聞2021年3月26日付2面より)