深度300mの地中熱利用へ 北大でシステム評価の実証試験

2021年04月01日 10時00分

深度300mの地中熱利用システムを施工し熱応答を検証する

構内にボアホール、有我工業所協力

 北大と秋田大、産業技術総合研究所は30日、深度300mの地中熱利用システムを評価するための実証試験を札幌市内で始めた。北大構内に地中熱用の掘削孔(ボアホール)を設け、簡易熱応答試験と呼ぶ新方式で効果を検証する。大深度システムで実用化の道筋が付けば、商業施設など大規模空間での地中熱利用が限られた敷地でも可能になるため、普及に向けた主要技術の一つとして成果が注目される。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」の一環で実施。北大を含むコンソーシアムは、高度化・低コスト化のための共通基盤技術開発について研究し、採熱に必要なボアホールの最適な長さや本数を導き出すための簡易熱応答試験法などを札幌と山梨県甲斐市、広島県三次市の3カ所で検証する。

 札幌は、北大大学院工学研究院の長野克則教授が中心となって研究する。有我工業所(本社・上富良野)の施工で、30日に地中熱交換器の設置工事を北大構内で実施。スイスから輸入した採熱管と測定用のケーブルを地中に300mの深さまで入れていった。

有我工業所のスタッフが
長さ300mの採熱管を徐々に挿入していった

 地中熱利用システムを導入するには、TRTと呼ばれる熱応答試験で検証することが環境省や国土交通省のガイドラインで求められている。しかし、フィールド試験に60時間ほど要し、費用も200万円ほどかかるなどコスト負担が課題だった。長野教授らが考えた簡易熱応答試験法は約12時間で検証できる。

 実証試験では、光ファイバー温度計を採熱管に取り付け、連続計測しながら有効熱伝導率を推定する。従来方式より作業を簡略化でき、高精度の簡易熱応答試験法として技術確立したい考えだ。

 地中熱利用システムは、CO排出量削減のために再生可能エネルギー熱を利用し、効率よく冷暖房に使う技術。欧州や北米、中国では大規模システムが稼働するが、日本は年間300件程度の導入にとどまるなど普及が進んでいない。

 大規模施設に地中熱を利用する場合、ボアホールを一定間隔を開けて設けなければならず、広い敷地が必要になる。大深度化すれば狭い敷地でもたくさんの熱を採れるため、国土の小さい日本などで有効だという。

 長野教授は「300m掘れば地温が6度から9度ぐらい上がる可能性があり、札幌は地温10度のため16度ほどになることが期待できる」と話す。

 プロジェクトマネージャーを務めるNEDOの谷口聡子新エネルギー部主査は「電力による再生可能エネルギーが注目されるが、熱は柔軟性があるためカーボンニュートラルに有効。今後も技術開発を地道に続けたい」と話している。

(北海道建設新聞2021年3月31日付3面より)


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