レールの彼方に 北海道新幹線開業5年

 北海道新幹線が3月26日で開業5周年を迎えた。利用者数を見れば初年度の2016年度をピークに毎年減少し、コロナ禍の20年度は前年度の3分の1に当たる1日平均1500人で推移するなど苦戦が続く。だが沿線各地域には開業をきっかけとした前向きな変化も出ている。新幹線が地域に何をもたらしたのか、現地取材から報告する。

(経済産業部・吉村慎司、武山勝宣、宮崎嵩大)

レールの彼方に 北海道新幹線開業5年(下)北斗は変わる 道の途中

2021年04月08日 12時00分

「新幹線」「いさりび鉄道」走る街

 3月下旬、水曜の夕方。北斗市の沿岸部にある道南いさりび鉄道上磯駅に函館方面行きの車両が着くと、春休みを目前にしたジャージー姿の高校生たちがにぎやかに乗り込んできた。1両だけの車両は満席に近い。五稜郭駅で多くがはけるまで、車内は沿線住民の活気であふれた。

 北海道新幹線開業と時を同じくして、並行在来線としてJRから経営分離された江差線のうち五稜郭―木古内間37・8㌔を第三セクターの道南いさりび鉄道(本社・函館)が引き継いだ。住民の足でありながら、時間帯によって添乗員が乗り込んで沿線の歴史や見どころを案内したり、いさり火の景色を楽しむため消灯したりとエンターテインメント要素を打ち出す。日本旅行と連携して食事付きの観光列車も運行する。

 「いさ鉄」の愛称で道外にも知られるようになった一方、ベースが生活路線である以上沿線の人口減少にはあらがえない。開業の2016年度に年間72万人だった利用客は19年度には63万人に減り、コロナ禍の20年度は60万人を切る見込み。三セクは3月26日、道内客による旅行需要を掘り起こそうと1日乗り放題切符を販売し始めた。

 北斗市内でいさ鉄沿線が生活圏域と位置付けられるのに対して、市の東端に位置する新幹線新函館北斗駅周辺はこれから開発する地区だ。だが現時点で駅周辺は建造物がまばら。市が区画整理した駅南の商業地は7割が売却済みだが、昨年6月に開業した東横インを除くと目に入るのはレンタカー業者ばかりで、街はまだ姿を現していない。

新函館北斗駅前の開発は進んでいない

 新幹線駅といさ鉄という2つの観光・交通インフラが同じ市内にあるものの、それぞれ直接にはつながっていない。いさ鉄は一大観光地の函館、また松前方面観光の拠点となる隣町・木古内の新幹線駅に直結していて、新函館北斗駅から見ればいわばライバル関係でもある。連携した地域プロモーションの動きは弱い。

 背景には独特の地域事情もある。新幹線駅があるのは旧大野町、いさりび鉄道沿線は旧上磯町だ。道南のある経営者は「合併して15年たつのに旧2町に一体感が出てこない」と漏らす。

 さらに厳しいのが、長く農業、漁業を主産業としているためどちらにも観光のノウハウがないことだ。新幹線開業直後の16年度、北斗市の観光入り込み客数は過去最高の123万人に達したが、ブームが落ち着いた19年度には74万人と40%減った。同じ期間に函館市は4%減、木古内町は3%減。道の駅が開業した隣の七飯町は13%増と、北斗の落ち込みが目立った。

ワーケーション誘致 立地生かす

 むろん市も手をこまねいてはいない。今着目するのは、コロナ禍で注目される「ワーケーション」だ。首都圏企業のワーケーション誘致を狙って全国の地域が候補地に名乗りを上げるが、「北海道の食と自然が味わえて、なおかつ必要とあれば新幹線ですぐに本社に戻れる北斗の競争力は高い」(楠川修北斗市企画課長)。月内にも、受け入れ可能な市内施設の情報を発信するサイトを新設する。また、高齢住民のいさ鉄利用促進を視野に、21年度は駅など市内を巡回するワゴンバスを走らせる計画もある。

 新幹線開業を機に、地域にはこの5年で明暗さまざまな出来事が去来した。関係者が得た知見が次の5年、さらにその先の未来につながる。

(北海道建設新聞2021年4月1日付2面より)


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