新技術導入、ICT施工に力
マルト東和開発(本社・札幌)は、道路工事や造園、除雪業務を手掛ける土木会社。近年は民間土木にも力を注ぎ、本州の同業者と互いの閑散期に仕事を融通し合うなど連携を深めている。ドローンを使った3Dレーザー測量など新技術の導入にも前向きだ。6日で設立30周年を迎え、社長の石原章弘さんは「初心を忘れず、これからも一歩ずつ進みたい」と話している。
章弘さんの父・広吉さんが1966年に創業した。章弘さんは80年に東北工大建築学科を卒業し、石山組に入社する。建築部で働く章弘さんに、父は「会社を手伝ってほしい」と何度も求めたが、技術のほか、会計や管理など幅広く学べる石山組での仕事に満足していたため、固辞し続けてきた。
入社から10年余りが過ぎたころ、父の4度目の求めに根負けし、家業を継ぐことを決めた。「社長になることが条件」と提示し、34歳の若さで会社の代表に就任。翌92年〝マルト東和開発株式会社〟に社名変更した。
札幌市の土木A2等級として道路改良や舗装、造園、除雪業務を担う。ここ5年は住宅地や商業地の造成など、本州をメインとした民間土木の仕事も多くなってきた。同業者との信頼関係を徐々に築き、本州と北海道の繁忙期のずれを生かし、相互で出稼ぎの連携も図っている。
新技術の導入に積極的だ。自社開発した基礎杭固定用補助具は、杭の微妙な左右、高さの位置を調整するための器具。太陽光発電の架台設置など、大規模な現場で効果を発揮する。2019年6月に特許を取得した。
ICT施工に注力する。測量機器と連動し、現場での位置出しや丁張り設置、施工段階のチェックなどの作業を1人でできるアプリを採用。ドローンを使った3D測量にも取り組み、21年度はさらにレーザースキャナーを使った3D起工測量を試みる。
章弘さんの三男で取締役工事課長の光大(こうた)さんは「外注することなく、土木会社自ら測量すればコストダウンや工期短縮を図れ、大きな強みになる」と説明する。
事業承継も視野にある。現在、次男の成士(まさし)さんは取締役工事部長で、民間土木に長らく尽力し、本州事業の道筋を付けた。父・章弘さんは「うちは鎌倉時代から続く本家で、僕で5代目。会社を継ぐことは家を継ぐ宿命でもある」と説く。
成士さんは「伝統を大切にし、自分の子どもに未来をつないでもらうよう役割を果たしたい。自社施工でお客さんに良いものを提供し、決められた予算の中で利益を残しながら、人材や設備の投資を確実にこなせるような会社になれば」と話す。
6日で設立30年となる。章弘さんは「偶然」と話すが、時を同じくして事務所を清田から真栄に移し、新たな拠点のもと次の時代を歩むこととなった。
新事務所の脇には、ロゴマーク「緑のスコップ」を掲げる。もともと〝初心を忘れず、より安全で良質な品質の作業を提供したい〟の思いを込めて作り、最近は節目を表す数字の30を加えた。数字部分はマグネットのため取り換えられ、来年は31、再来年は32と刻む考えだ。「明日に何があるか分からない。1年ずつ更新できるかは働くみんなにかかっている」と章弘さん。
緑のスコップの向かいには、マルトをあしらった社章「東」が掲げられている。章弘さんと同時期に入社した大親友が考えたデザインで、亡くなった今も形見として大事に使っている。
(北海道建設新聞2021年4月5日付3面より)