「90分以内の壁」 安定供給へ苦悩
道内の生コンクリート業界で工場の集約化を中心とした構造改善が進む。4月は道南と道央で、企業の枠を超えた共同操業の動きがあった。人口減少や少子高齢化を背景に生コンの需要は年々縮小。業界は自助努力として集約化を模索する。だが、生コンは工場での練り混ぜ開始から現場の荷卸しまで90分以内に済ませなければならず、広大な北海道は安定供給の側面から構造改善をやみくもに進められない。事業者の苦悩は続く。
4月に入り、道南で和工生コンクリート(本社・せたな)と北海道太平洋生コン(同・函館)が共同操業に合意し、北海道太平洋生コンの北桧山工場を休止することにした。道央では開進コンクリート工業(同・小樽)が銭函の本社工場を休止し、旭ダンケ(同・旭川)札幌工場に製造委託することにした。
生コン業界では需要減少から、工場の集約化をメインとした構造改善が最優先課題にある。道内は最近、札幌の市街地再開発など民間設備投資向けが旺盛だが、ピークの1995年度と比べ3分の1近くに減っている。業界団体の北海道生コンクリート工業組合では、2021年度需要量を過去最低の306万8000m³と見込む。地方を中心に業況は悪い。
生コン工場の品質維持をチェックする全国生コンクリート品質管理監査会議によると、道内の稼働工場は02年度で351カ所あったが、18年度は208カ所に減った。日本産業標準調査会のまとめでは、直近の日本産業規格(JIS)マーク認証工場は201カ所となっていて、集約化は着実に進んでいる。
留萌では18年にハタナカ昭和とホッコン、北海道ティーシー生コン(現・北海道太平洋生コン)、留萌アサノコンクリートが共同操業に踏み切り、地域の供給を1工場に託すことを決めた。旭川では17年に旭ダンケと北海道ティーシー生コン、愛別生コンが3工場の機能を1カ所に集約した。
ここ数年、集約が断片的にしか進まないのには理由がある。生コンは材料のセメントと水が反応して2―5時間で固まり始めるため、練り混ぜてから90分以内に現場へ届けるようJISで求められている。仮に地元の生コン工場が1カ所も無くなった場合、他地域から生コンを出荷してもらうにしても、90分以内に届けなければ使うことができない。
広い北海道の場合、90分のハードルは一層高い。安定供給という業界の使命を果たしつつ足元の需要減に合わせた集約化を進めるには、工場の立地や設備の寿命を加味する必要があり、やみくもに進められない。
北海道生コンクリート工業組合の成田真一理事長は「工場の統廃合は自動車や石油の業界で進んでいて、時代の流れだと思う。供給の空白地帯は作れないが、生コン会社が事業を続けるには構造改善は避けられない」と話している。
(北海道建設新聞2021年4月14日付3面より)