未来への道、途切れさせない 1人当たり年間48万円を無償給付
カナモト(本社・札幌)の金本寛中会長が、大学生や大学院生、高等専門学校生の奨学金を支援する「一般財団法人カナモト財団」を設立した。私費による取り組みで、当面は学生1人当たり年間48万円を無償で給付する。金本会長に財団の設立目的や将来ビジョンを聞いた。
―財団設立のきっかけを。
2016年に社長を退き、会長に就いてからも海外出張など忙しかったが、新型コロナの存在によって動き方が一変した。時間的な余裕ができ、そろそろ社会還元した方が良いのではと考えた。そんなとき、コロナで学生が経済的に困り、退学を余儀なくされているといった報道を多く目にした。
そこで、奨学金の支給に向けた活動を立案した。学校は4月始まりのため、昨年秋からスピード感を持って取り組んだ。金融機関やコンサルティング会社の助言を受けながら、何とか春に間に合わせることができた。
―助成内容は。
学生1人当たり月額4万円、年間48万円を支給する。初年度は8人を対象とし、北大や室蘭工大など8校を指定することにした。高等専門学校を含めたのが特徴だと思う。高専生は4年生が対象で、2年間で96万円を支給する。各校に推薦者を選考してもらい、財団の評議会で簡単な論文などを基に選考し、採用を決定する。給付型なので返済は求めない。
―カナモトとの関係性を。
個人的な社会還元のため、会社は基本的に関係ない。ただ、僕個人の財産を拠出することから、将来的にはその中にカナモトの株式が組み込まれる可能性もあり、会社にも関係がないわけではない。このため事前に、金本哲男社長に財団設立の趣旨を知らせた。リクルートに活用することは一切考えていないが、企業のイメージアップになるだろうとは考えている。
―社会還元について。
僕らが若かったころは、みんなが貧しかった。今は格差が付きすぎていると思う。こうした社会情勢の変化に、収益重視で突き進んできた僕ら企業側も一役買っていたのかもしれない。これからはSDGsを含め、社会的なことを考える必要があるだろう。一方で経済はボーダーレスになっていることから、より厳しさを増しているのも事実だ。
―将来の目標を。
まずは道内の在学生を対象にスタートした。最終的には数十人規模、最低でも30、40人に支給したい。カナモトが業績を伸ばし、しっかり配当してくれれば100人も夢ではない。永続的に取り組める仕組みにしたい。
(北海道建設新聞2021年4月19日付3面より)