風力など脱炭素ビジネス注力
3月1日付で戸田建設札幌支店長に就いた。民間建築では、宿泊施設の計画がコロナ禍の影響を受けているが、同社が元々得意としている医療福祉分野を強化し、宿泊・医療両にらみの体制を整える。さらには浮体式洋上風力発電などの脱炭素ビジネスにも注力する考えだ。(建設・行政部 大坂力記者)
―支店長就任の抱負を。
弊社はことし創業140年を迎える。先輩たちの培ってきた信頼や信用、常に変革する、新しいものに挑戦・創造していくという精神を若い世代にしっかり伝え、次の150周年を目指していく。
新型コロナウイルスの影響で先行きが見えないが、食や観光、再生可能エネルギーなど北海道のポテンシャルは高い。生まれ育った故郷への恩返しのつもりで北海道の輝かしい未来に向かって力を尽くす。
―北海道の市場をどう展望しているか。
宿泊施設を中心に計画延期や中止などが相次いでいる一方、北海道新幹線の札幌延伸に伴う札幌駅周辺の開発や1972年の札幌五輪時に建設されたビルが更新時期となり、市内中心部の再開発計画が活況を迎えている。風力発電では陸上、洋上で数多くの計画が進められている。
―それを受けて今後の経営戦略はどうするか。
2021年度は建築150億円、土木50億円の計200億円の売り上げと受注の維持が目標だ。
建築部門は、これまで病院などの医療福祉とホテルを中心とした宿泊施設が二本柱だったが、コロナ禍の影響で宿泊施設の計画が中止、延期となっていることから従来の強みである医療福祉分野で企画・設計を含めた提案型営業の強化を図る。
コロナ禍の状況だからやらなければならない工事とコロナ後を見据えた工事があり、両にらみで考えている。その中で病院は病床をある程度確保しないといけなかったり、後継者問題を抱えるところもあり、病床を確保して移転新築を計画する話も聞く。札幌支店は特に医療関係の受注に力を入れている。
また、ここ数年途切れている官庁工事や物流施設、市内中心部の再開発にも注力したい。
土木部門は、陸上、洋上の風力発電をはじめ、高速道路のミッシングリンク解消や4車線化などの高規格道路関連にも取り組んでいきたい。
本業以外の脱炭素ビジネスとしては、環境省の浮体式洋上風力発電導入に向けた調査委託業務を利尻町や奥尻町とともに進めている。北海道応援団会議の一員として地域貢献や地域振興、地方創生にも力を注ぐ。
―社内の働き方改革はどう進めるか。
残業時間の削減に向けていろいろ工夫しなければならない。特に現場にいる職員の労働時間を短縮しようとしている。3年前に全社でフレックスタイム制を導入したが、内勤者はうまく活用できているものの現場では難しい。内外勤の労働時間の格差をどう解消していくかが大きなテーマだ。
―社員には就任時にどんなメッセージを送ったか。
札幌支店は170人程度と全国で比べると小さな規模なので、社員には大家族である意識でいると伝えた。ただ、なれ合いではなく一人一人がプロフェッショナルとして活躍しパートナーとして進んでいける関係だ。例えば、1級施工管理技士や建築士、技術士の資格を取るのもプロになるための一つの通過点。自発的に自分から取るような心構えで各自が進んでほしい。
瀬尾暢宏(せお・のぶひろ)1960年9月24日生まれ、帯広市出身。84年3月北大工学部土木工学科卒後、戸田建設に入社。土木部門の施工、設計、営業に携わり札幌支店の営業部長や支店次長を経て2021年3月から現職。
(北海道建設新聞2021年4月21日1面より)