会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 近藤商会 価値生む「働きやすさ」

2021年04月23日 12時00分

ICT環境やペーパーレス化

 近藤商会(本社・札幌)は、オフィスや商業空間の備品、内装、レイアウト、ネットワーク環境までワンストップで提供する総合空間プランニング企業だ。昨年の決算期は過去10年で最高の売り上げを記録。昨年の本社移転を機に、自社オフィスのショールーム化を実現するとともにICT導入やペーパーレス化など働きやすさ向上にも取り組んでいる。

 近藤復三郎氏が1924年に札幌で創業し、文房具やオフィス家具の法人向け販売で成長。バブル崩壊に持ちこたえたが、利益率の低いビジネスモデルのため業績は悪化した。こうした中、取引していた内田洋行のグループ企業にいた宇佐美徹氏が11年に常務として入り、翌年社長に就任した。

地元企業をサポートしたいと話す宇佐美社長

 宇佐美社長は「生産性や残業時間など改善すべき点が多かった」と当時を振り返る。これが働き方改革への転機になった。タブレットなどデジタル端末が本格普及したころで、社内のデータをクラウドに保管して外出先で見られるようにし、営業は直行直帰できるようになった。「従業員が書類に縛られている状態を解消したかった」と説明する。本社移転時は4㌧の書類を廃棄してペーパーレス化を図った。

 これらにより繁忙期を除いて午後8時にはオフィスが無人になり、有休消化率も上がったという。

 早期退職にも取り組み、人件費を削減。売り上げは減ったが、経費を大幅に減らすことで黒字転換を達成した。当時の心理的な負担は大きく、「朝方に目覚める日々が続いた」と振り返る。

 環境整備の先に目指したのは高付加価値ビジネスへの転換だ。安価な製品の大量販売は利幅が小さいし、大手ECサイトにはかなわない。そこで、オフィスの移転やリニューアルに関する相談に乗る総合的なコンサルティング事業を始めた。

 14年に内田洋行の子会社化を経て、15年に内装やインテリア事業を得意とするインテリアヤマト(札幌)と合併。人材やノウハウが豊富になり事業に拍車が掛かる。

 オフィス提案は営業や技術、デザイナーがチームで取り組む。案件のほとんどがコンペだ。大小の備品やレイアウト、内装、無線LANなどネットワーク周辺まで一括で扱える強みをアピールする。個々の商材は最安でなくとも、顧客の時間や労力を含めた全体的な高コストパフォーマンスを狙う。

 本社を置く新しいビルに同時移転した他社のオフィスも扱った。「近藤商会に相談して良かった」と喜んでもらえた。

 移転を機に、自社オフィスの見学ツアーも始めた。開放的で明るく、11階の窓から山や街並みを一望できる魅力的な空間だ。日に1、2組が訪れ、オフィス家具やネットワーク環境などを見てイメージを膨らませてもらう。

特注の円形チェアや開放的なミーティングルームなど内装にこだわったオフィス

 周辺事業では、ネットワークが扱える強みを生かし、ICT環境やレイアウトの現状を診断し、平面図などで課題を明らかにする「オフィス・ドック」を始めた。昨年はススキノ地区のN・Squareビルに設置されたプロジェクションマッピングで、映像投影機器を取り扱った。「当社には特殊な案件で、他社と協業して手探りで進めた」としつつ手応えを得た。

 一方、地元企業の空間づくりを支援する上で「通訳」としての存在価値が大きいと捉え、オーナーや設計者、技術者らの意見・スキルを把握し、プロジェクト全体のマネジメントに力を入れる。「大手企業の仕事というイメージがあるが、一定規模の案件は地元で担える役割があるはず」。さらなる挑戦を続ける。

(北海道建設新聞2021年04月19日付3面より)


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