深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り monomode 五十嵐翔太社長

2021年05月05日 10時00分

五十嵐翔太社長

北海道から「発進力」強く

 monomode(モノモード、本社・札幌)は、インターネットを使った企業PRや販売促進、また業務効率化ツールの開発などで成長中のIT企業だ。創業7年半で道内外の300社近くと取引。コロナ禍ながらファンドからの資金調達にも成功している。デジタル・トランスフォーメーション(DX)が叫ばれる昨今、企業のネット活用はどう変わってきたか。五十嵐翔太社長(32)に尋ねた。

 ―企業や大学のサイト作成実績が豊富だ。

 企業にとって、自社サイトを持つことの意義が以前より大きくなっている。10年前なら看板や名刺と同じような位置付けだったが、今は技術の進歩で、顧客分析などマーケティングに使える道具になってきた。

 例えばページ内のどの部分がより注目されているか、スクロールの速度がどこで変わるか、閲覧者は何回目の訪問かなどさまざまなデータを分析できる。サイトを客と接触する窓口と考えて、ここから問い合わせを取ろう、取引につなげようとする企業が増えている。

 ―サイト作成も分析も今は無料ツールが簡単に手に入る。ビジネスとしては厳しくないのか。

 個人事業や小規模事業者の場合は無料サービスで十分という声はあるだろう。だが中規模以上の企業が個人向けの簡易ツールを使っていては信用力にも影響する。

 ―北洋銀行系ファンドから昨秋出資を受けた。IT企業が無数にある中、他社との違いは。

 企画立案から制作、運用開始後の分析まで一気通貫でデジタルマーケティングを提供できる体制だろう。顧客企業ごとにどうすれば業績向上に貢献するか、一緒に考えながらプランを練っている。完成した企業サイトだけを見れば、どの業者の仕事も大差ないと思われるかもしれない。だが外部業者に発注して自社サイトを運営する企業にとっては、制作の過程や、そこで出てくるマーケティング施策も大事だ。

 ―20代前半で起業。もともと技術者なのか。

 大学は経済学部だが、独学でプログラムを学んだ。卒業時はリーマンショック後の最も景気が悪い頃で就職も厳しく、若いから失敗してもやり直せると考えて起業した。ITはパソコン(PC)さえあれば始められ、初期投資の資金がない自分にはちょうど良かった。起業後は大手顧客の獲得を重視しながら事業を広げた。

 ―今は東京にも多くの顧客を持つ。道内外の企業を見て、ネット活用の姿勢に違いは感じるか。

 そこは東京の方が進んでいると言わざるを得ない。道内企業のシステム担当者から問い合わせを受けるサービス名やキーワードが、東京で前年に語られていた内容ということも珍しくない。

 ―ネット時代の今、どこにいても情報が得られるはず。なぜ差が生じるのか。

 確かにどんな地方でもスマートフォンやPCで最新技術を知ることはできる。だが、それが同僚や取引先と話題になるかといえば違う。一因としては、当社を含めて道内でテクノロジーを発信する主体の力がまだ弱いことが挙げられる。課題として認識しているところだ。

 ―道内建設業界では、自社サイトがない中小事業者もたくさんある。

 サイトの大きな機能の一つが求人だ。建設業は人手不足が特に深刻な業界と聞く。若い世代は、就職を考えるときには必ずその社のページを見に行く。働き手を集めるには、自社サイトを持って採用関連の情報を充実させることが基本となる。ごく一部の大きな建設会社だけがしっかりやるのではなく、業界を挙げて、大小どの社も自社の魅力を発信している状態を目指してはどうか。

(聞き手・吉村 慎司)

 五十嵐翔太(いがらし・しょうた)1989年小樽市生まれ、2011年札幌学院大卒。札幌市内のIT企業でサイト作制やメディア運用を経験した後、13年にmonomodeを設立し代表取締役に就任。


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