中小ビルの共同開発触発
中央区北2条西4丁目、札幌駅前通の一角に建つ62年完成の北海道ビルが、新たな施設に生まれ変わろうとしている。計画を進める三菱地所(本社・東京)の担当者は「札幌市の地区計画変更による容積率の上限緩和が見込まれたため、単独での改築を検討するに至った」と説明する。
市は2020年7月、地権者らでつくる札幌駅前通協議会からの提案を受け、札幌駅前通北街区地区計画変更を決定。都心の開発誘導方針の考え方を反映した再整備に対し、1050%の容積率を最大1200%、高さ60mの最高限度を80mに引き上げる。
これに他のビル群も反応。同協議会の事務局を担い、札幌駅前通地下歩行空間を管理する札幌駅前通まちづくり株式会社の芳村直孝社長は「駅前通沿いでのビル改築は、1200%を満たす計画案が多く挙がっている」と明かす。建て替えに向けて動き出しているヒューリック札幌ビルとヒューリック札幌NORTH33ビル、札幌第一生命ビルディングも容積率緩和に伴って規模を上乗せする。
最近は未耐震や老朽化が進むビルで、隣接して不動産を保有するオーナー同士が一体開発に向けた話し合いを進めたり、勉強会を開くケースが出ている。消極的だった施設更新の意識が変わろうとしている。芳村社長は「中小規模のビルが周囲と共同開発すれば、大型化などのメリットがある」と期待を寄せる。
一方、30年度末の北海道新幹線札幌延伸、市が招致を目指す30年の冬季五輪などを見据え、札幌駅前では道都にふさわしい新たなシンボル実現に向けた歩みが始まった。
札幌駅南口では、北5西1・西2街区と北4西3街区でJRタワーを上回る高さ200m超の大型再開発が計画されている。このうち北5西1・西2街区は、地下4地上46階、高さ250mを誇る道内最大級のビルを構想する。実現に向け環境影響評価手続きが進むとともに、特定業務代行者選定にも着手していて、秋ごろにも事業者を選ぶ見通しだ。23年度の着工を目指す。
ヨドバシホールディングスや北海道建設会館などが地権者となっている北4西3街区では最大高さ220m、40階建てで延べ23万m²の再開発計画を予定する。施設概要は固まりつつあり、区画内の一部ビルではテナントの移動先にめどを付けるなど、着工に向けた準備が進む。
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが根付き始めるなど働き方が変わり、札幌都心部でもオフィスの床面積縮小に動く企業が出始めた。頼みのインバウンド回復も未知数となっている。
駅周辺で計画される再開発ビルのほとんどは、オフィス床を多く持ち、上階にはホテルが入る仕様のため、事業者が思い描く商機は揺らぐ。
北5西1・西2街区に携わる札幌市の高橋秀士まちづくり政策局札幌駅交流拠点推進担当部長は「計画に大幅な変更はないが、マーケットを見ながら柔軟に対応する必要はある」とみる。コロナ禍の経済情勢を見据えた慎重な選択が求められる。
(北海道建設新聞2021年5月10日付14面より)