深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 旭川機械工業 関山真教社長

2021年05月13日 10時00分

関山真教社長

ニッチ市場 活路見いだす

 旭川機械工業(本社・旭川)は、75年の歴史を持つ産業機械メーカーだ。農林水産品や金属の加工、窯業など本道の2次産業を支え続ける老舗だが、新展開として今春、マレーシアに農産品加工機械を輸出することが決定。将来の海外展開拡大を視野に入れている。3代目トップに就任して2年が過ぎた関山真教社長(46)に狙いを聞いた。

 ―海外輸出は初めて。どんな経緯だったのか。

 きっかけはユーチューブ動画だ。当社は6年前から自社製品の紹介映像をアップしている。2年前にトウモロコシの自動皮むき機の動画を公開したところ、数カ月たってマレーシアのマリンゴールドマーケティング社が見てくれて、日本人を介して当社に連絡をくれた。この会社は自国内だけでなく東南アジア、欧州にも流通する有力なトウモロコシ食品メーカーだが、皮むきは人海戦術でやっているとのことだった。

 ―コロナ禍で人が往来できない中、ネットだけで商談したのか。

 昨年2月、新型コロナウイルスで道が緊急事態宣言を出す直前に先方の社長が見に来られ、気に入ってもらえた。昨年末に正式に受注したが、当社は海外拠点がなく、据え付けなどの現地委託先を見つけなければならない。探した結果、マレーシア法人を持つ大阪の日本機材と組むことができ、今春やっと出荷準備が整った。

 ―外国からの発注に対応する道内製造業は少ない。以前から輸出を考えていたのか。

 海外との接点は8年前、中国の展示会にパネル出展したのが最初だ。その後、周囲からのお誘いもあってベトナム、ロシアなどに足を延ばした。ベトナムでは2018年に国際協力機構(JICA)のODA事業に採択され、トウモロコシの皮むき機を使った農産品加工の準備を進めている。

 人口減で日本市場が頭打ちになるのは避けられず、国外の需要を取り込む必要を感じている。東南アジアは発展中で、将来性も大きい。

 ―「外国語の壁」はないのか。

 当社は従業員10人強で、外国語が話せる社員はいない。だが、話せる人に間に入ってもらえば商売はできる、というのが結論だ。数年前、当社で加工した住宅資材をロシアに輸出したことがある。このときもロシア語を話す専門家の仲介があって、小さいながら取引実績をつくることができた。

 初めて中国に行ったころは、当社のような小さな会社が海外ビジネスなど無理という雰囲気が社内にも、正直に言えば私自身にもあった。だが経験が増えてきた今ではそうは思わない。

 ―東南アジアは世界のものづくり拠点として成長中だ。今回の輸出は食品分野だが、工業系の生産機械も良さそう。

 工業系は中国メーカーが強く、ともすれば日本製を上回る性能の機械をより安く提供しているため、対抗しても勝算は低い。私はトウモロコシ、またタケノコの自動皮むき機を海外向けのメイン商材と考えている。ニッチ市場だが、当社が独自開発し、世界的にも競合が見当たらない分野だからだ。

 ―購買力はどうか。マレーシアは東南アジアでも成長国だが、他の国では高価な日本製機械を輸入できる企業は少ないのでは。

 確かに購買力の問題はあるが、実感として、全体的に日本との経済格差は年々縮まっている。5年前に初めてベトナムを視察したときは日本製などとても買えないという反応だったが、最近は現実的に話を聞いてもらえるようになった。

 当社は世界からも必要とされる機械メーカーになることを目指している。コロナ収束後には各国で営業活動を再開したい。

(聞き手・吉村 慎司)

 関山真教(せきやま・まさのり)1974年9月旭川出身。98年関東学院大工学部卒業後、札幌の土木設計会社に入社。2001年に旭川機械工業に入り、03年常務取締役、19年に代表取締役に就任。

(北海道建設新聞2021年5月12日付2面より)


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