コロナ禍の工夫 ワーケーションや初心者向けプランなど
本道の観光業界でキャンピングカーが存在感を増してきた。長引くコロナ禍を受けてレンタル事業者のターゲットが、外国人観光客から人混みを避ける国内客に変化。春の大型連休期間は予約でいっぱいの業者もあった。夏休みシーズンを前に各社はワーケーション、初心者向けプランなどさまざまな切り口で顧客獲得に動きだしている。
春の大型連休期間、千歳市内に車両拠点を置くノマドレンタカー(本社・札幌)では20台強のキャンピングカーがフル稼働となった。当初は首都圏の緊急事態宣言と重なり、本州客のキャンセルが数件あったが、すぐに道内客の予約でいっぱいになった。JRや航空各社など公共交通機関の不振とは対照的だ。
同社の阿部晋也社長は「感染リスクを避けて休日を過ごす国内客にニーズがある」と分析する。同社がキャンピングカー事業を始めたのは4年前。母体は印刷業だが、台湾の取引先から依頼を受け、来道台湾人向けに車両を調達したのが始まりだ。好評だったことを受けて少しずつ台数を増やし、インバウンド増加を背景に利用実績を伸ばした。昨年は新型コロナウイルスによる打撃を受けたものの、ことしは国内客の休日利用が拡大している。
車両の稼働率アップを兼ねて3月からはキャンピングカーを使ったテレワーク支援キャンペーンを始めた。同社の価格帯は通常1泊2万―5万円。5泊以上の客を対象に、車内で仕事をしている写真を確認して最大30%を割り引く仕組みだ。
新たな客層を開拓しようとホテルでの宿泊を組み合わせる業者もある。「DO CAMPER」の名前で4年前からキャンピングカーレンタルを展開する日本駐車場開発札幌(本社・札幌)は、旅行会社との協力でキャンピングカーレンタルとホテル宿泊、旅行保険をセットにしたパッケージプランを販売している。数日間を車で過ごすことに慣れない人の利用を促し、プラン提案の幅を広げる狙いもある。
レンタル事業や個人保有の増加を受けて、車両生産は増えている。業界団体の日本RV協会によると、キャンピングカーの出荷台数は右肩上がり。2017年に年間5000台を超え、2年後の19年には約3割増の6445台に達した。新車の納車は半年、1年待ちも珍しくないという。
一方で課題もある。例えば宿泊目的で駐車する場所の問題だ。現状では道の駅での車中泊が多く見られるが、休憩施設のため宿泊は厳密には認められていない。
こうした中、車中泊を前提とした「RVパーク」と呼ばれる施設に関心が集まっている。広い駐車スペースやトイレ、ごみ捨て場などを利用できる施設で多くが有料。協会によると、昨年5月時点で全国に150カ所あり道内でも今後増えそうだ。
「さくらスタイル レンタルキャンピングカー」を運営するSAKURA STYLE(本社・札幌)は19年、札幌市南区小金湯の営業所近くにRVパークを開業した。大型連休のレンタル利用客のうち2割は同パークに宿泊したという。
厳しい状況に置かれる観光業界でキャンピングカーは数少ない成長分野の一つだ。夏休みシーズンに向けてさらに期待が高まる。
(北海道建設新聞2021年5月14日付3面より)