受注見通しに不透明感 コロナ禍で手元資金確保の動き
建設業界で銀行からの資金の借り入れが急増している。北洋銀行と北海道銀行の2021年3月期決算によると、建設業向けの貸出金残高は21年3月末時点で2行合計3894億円に達し、半年前より327億円、1年前より994億円増えた。長引くコロナ禍で今後の受注見通しが不透明感を増し、資材コストや人件費が上昇傾向にある中、手元資金を早めに確保しようとする経営者心理が表れているもようだ。
コロナ関連融資を背景に多くの業種で貸出残高が上がっているが、全業種ベースの増加額は直近半年で632億円、うち半分強を建設1業種が占めたことになる。昨年3月末から9月末にかけては建設業の増加分は全業種の6分の1強。建設業は直近半年間で、他業種を上回るペースで借り入れを増やしている。
建設業の業績が悪化しているわけではなさそうだ。貸出額のうち、回収に懸念がある「リスク管理債権」は100億円で全体に占める割合は2.6%。昨年9月末より6億円増えたものの、120億円台で推移していた2年前より改善した。
北海道二十一世紀総合研究所の横浜啓調査部長は「建設業は代金を満額受け取るのが工事後になるため、例年なら借り入れは上半期の方が多い傾向にあるが、この1年は様子が異なる」と指摘。「不透明な情勢下の備えとして好条件で借りられる今、手元資金を厚くする社が増えている可能性がある」と分析する。
(北海道建設新聞2021年5月19日付2面より)