若い世代に「体験の場」を
道内各地で多くの団体がまちづくり、環境保護といった地域課題解決に取り組む中、主にボランティアの若者を各現場に送り込むのがNPO法人ezorock(本部・札幌)だ。石狩のライジングサンロックフェスティバルの環境対策に始まり、札幌中心部のシェアサイクル「ポロクル」の現場運営などにも事業範囲を広げ、今春設立から20年を迎えた。草野竹史代表理事(41)に活動の全体像を聞いた。
―どんな団体か。
若い世代に、地域課題と向き合う体験の場を提供するのが一番の狙いだ。さまざまな団体・企業が主宰する地域活動とつながりを持ち、若者は私たちのNPOに会員登録すると、研修を受けた上でスタッフとして各地の活動に参加できる。登録には年会費で学生3000円、社会人5000円が必要だが、現場への交通費など参加に伴う諸経費は原則本部持ちだ。
―規模はどのくらいで、どんな事業を。
会員は例年200―300人いる。知られているのはライジングサンロックフェスティバルで出る生ごみから堆肥をつくり、ジャガイモを栽培・販売するプロジェクトだが、去年はコロナ禍でフェス自体が中止になってしまった。それでも石狩での薪(まき)づくりや、道内全市町村を対象にしたオンラインでの地域おこしイベントなど、2020年度の活動は245件に及んだ。延べ日数は443日、参加人数は延べ1762人あった。
―コロナ禍を受け札幌で再注目されている「ポロクル」にも関わる。
駐輪が集中するシェア拠点からすいている拠点へ、必要に応じて自転車をワゴン車に載せて動かす作業だ。事業運営団体から業務委託を受け、会員がシフトを組んで毎日10人程度働く。これは私たちとしては珍しい、アルバイトとしてまちづくりに関わる仕組みだ。
―外部からの業務委託収入もあるのか。
私たちは一般企業の売上高に当たる収入が例年4000万円から5000万円程度あり、うち半分強を連携先からの委託収入が占めている。NPOと言うと補助金で運営するボランティア団体だと思い込む人もいるが、きちんと収入を得て継続的に事業を展開しながら、担い手を育てることが重要だ。
―行政からの支援は受けていないのか。
案件によって自治体などから助成・補助金をもらうこともある。だがその一方で、自分たちで薪をつくってカフェ向けに販売するといった事業もやってきた。
運営は私を含む理事4人、職員6人、学生インターンシップ5人の体制だ。職員の人件費を確保して、数百人の会員に最小限の自己負担で活動してもらうためには、非営利組織とはいえ企業とそれほど変わらない運営、資金管理が必要になる。
―会員はどんな人たちか。
高校生から30代の社会人まで幅広い。一部の大学とは、単位が取れる実地学習としてカリキュラムに組み込んでいる例もある。いずれにしても、知識として課題を知るだけでなく、解決のために行動する意識がある人たちが会員になっている。会員活動を経て起業する人も出てきた。
―企業との接点は少ないのか。
最近は持続可能な開発目標(SDGs)が広まり、私たちの活動に若手社員を参加させる企業が増えてきた。例えば森林環境について会議室で勉強するのもいいが、野外で木を切りながら考える方が強く心に残る。年に数日だけの参加でも問題ない。社員研修の選択肢として認識してもらえればうれしい。
(聞き手・吉村 慎司)
草野竹史(くさの・たけし)1979年12月生まれ、札幌市出身。2002年酪農学園大卒、建設コンサルティング会社に入社。在学中にezorockを設立。06年からNPO活動に専念。
(北海道建設新聞2021年5月21日付2面より)