深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り レアックス 成田昌幸社長

2021年05月31日 15時00分

成田昌幸社長

「挑戦」こそが自社の強み

 建設工事は現場の地質・環境調査に始まる。本道でも多くの専門業者が活躍する中、地質調査・計測サービスのほか地中を画像解析するための特殊カメラを開発しているのがレアックス(本社・札幌)だ。裏方のイメージが強い業界にあってVRなど新技術の導入、海外市場開拓といった独自の事業展開が異彩を放つ。成田昌幸社長(53)に経営戦略を聞いた。

 ―会社の概要を。

 社員は取締役2人と執行役員2人を含めて35人いる。主に公共工事に伴う地質や環境の調査をやりながら、調査のための装置を開発してきた。ボーリング孔に通して地層を撮影する「ボアホールカメラ」が看板製品だ。計測サービス以外にレンタル、また提携業者への提供もあり、全国で常時約40台が動いている。別途、当社だけが持つ高性能タイプもあって、例えば地下1500m地点の地質を調べるなど難しい仕事は専ら当社が引き受ける。

 ―地質調査の市場は成長しているのか。

 建設業と同じで、少なくともコロナ禍前までは拡大が続いてきた。バブル崩壊以降に公共工事が減って市場が縮んだが、災害復興や国土強靱化政策を機に復調した。近年は災害の多さを受けて社会全体の防災・減災意識が強い。断層が多い日本で地質調査の重要性は高く、技術貢献の機会は今後も増えるとみている。

 ―コロナの影響は。

 幸い、今のところ業績に影響はない。官庁の事務が滞り発注が遅れることはあっても、仕事のキャンセルは出ていない。課題はむしろ、業界全体での人手不足だ。工事が減った時期に技術者も減り、今も戻っていない。

 ―人材確保の努力は。

 地質調査の業界を広く世の中に知ってもらうことが第一歩だ。当社は体験プログラムを用意し、中学生から大学生まで課外学習を受け入れたり、学校で講演したりしている。科学教育のイベントにも出展する。こうした活動が、近年は持続可能な開発目標(SDGs)にも合致すると言ってもらえるようになった。

 ―SDGsの一つで、外国の水問題解決にも関わるそうだが。

 国際協力機構(JICA)のODA事業に採択され、2017年から2年間、南米のボリビアで井戸の長寿命化事業を手掛けた。当社のカメラで井戸内部を画像解析し、適切な修繕を施すことで、水が出なくなった井戸を何本も復活させた。

 当社は1980年代から90年代にかけて、北米などへの装置輸出を独力で試みたことがある。軌道に乗らずしばらく海外展開を控えていたが、ボリビアをきっかけに、公的機関と手を組んで海外に関わるパターンもあると分かった。コロナ禍までの数年は、行政の国際事業と連携してベトナム、ロシアなどにも行き、それぞれ手応えを得た。

 ―国内外を問わず、御社のデモではVRゴーグルを使った地中の疑似体験が人気だ。

 このVRシステム「アースダイバー」は、解析者や関係者間の情報共有目的だったが、業界外の人に興味を持ってもらう面でも役立っている。企業としても、新技術と向き合うことは社員の創造力を高め、社内を活気づける効果がある。

 ―最近の話題は。

 昨年末にマイクロソフトの「ホロレンズ2」という透明ゴーグルのような機器を入手し、北海道科学大と共同研究を始めた。これを着けると、視界に入る現実の景色にデジタル映像を重ねられる。例えば当社製品を使うときのマニュアルとして、操作説明が自動で視界に現れるといった活用もできそうだ。表示を多言語にすれば製品の輸出促進にもつながる。

 いろいろなことに挑戦するのは当社の企業文化だ。挑戦こそ、他社との最大の差別化要因になる。

(聞き手・吉村 慎司)

 成田昌幸(なりた・まさゆき)1967年12月生まれ、島牧村出身。90年札幌学院大商学部卒、94年レアックスに入社。2002年取締役、17年社長就任。18年小樽商大大学院でMBA取得。

(北海道建設新聞2021年5月28日付2面より)


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