感染対策の一番は、マスクを着けること。これはコロナ禍が始まってから1年半ほどたった現在でも真実だと思っています。しかし、イギリス型変異ウイルスが全国にまん延して始まった感染第4波において、深刻な事例の報告が多くなっています。PCR検査が陽性になって、感染が確認された人に調査すると、なぜ感染したのか思い当たらないという人が増えているということです。これら感染経路不明者の多くは、普段から感染対策に気を使っており、手指消毒やマスクの装着を怠りなくやっているというのです。感染対策をしているはずなのに、なぜ感染するのか考えてみる必要があります。
まず、手指消毒です。さまざまな施設に出入りするとき、消毒液は必ず置いてあり、手指消毒が行われています。しかし、消毒液がほんの少ししか出ない装置も多く、それでは手指消毒はできていないと断言できます。さらに消毒液に次亜塩素酸水を用いている所も依然としてあり、これはアルコール消毒に比べて格段に効力が落ちます。
その上、消毒液を指先だけ付けたり、手のひらには延ばしたりするのですが、手の甲に消毒液を延ばさない人もたくさんいます。次亜塩素酸水を少量だけ指先に付けたのでは、全く消毒していないのとほとんど変わりません。手指消毒のやり方は見直しが必要です。
次にマスクです。依然として、ウレタンマスクや布マスクを着けている人が多いです。これらのマスクは、飛沫(ひまつ)が周りに飛散することを防ぐ能力が、著しく落ちることがすでに明らかになっています。ぜひとも不織布マスクを使っていただきたいのですが、その不織布マスクの装着の仕方も正しくありません。
鼻を出すと、鼻を通る息に飛沫が含まれていて、周囲にまき散らします。また、不織布マスクについているノーズワイヤと呼ばれる針金状のものを、鼻筋にピタリと合わせて、ほほとの間に隙間を作らないようにするべきなのに、そうしていない人が大半です。正しく装着しないとマスクをしていないのと同じような状態になってしまうのです。
現在の変異型ウイルスは、感染力が1・7倍強いとされています。これまで少々不完全な感染対策でも防げていた状況でも、感染が成立する確率が飛躍的に高まっているのです。今こそ、普段の感染対策を見直しましょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)
(北海道建設新聞2021年5月28日付3面より)