建設産業、持続的発展へ 業界との連携、チームワークが重要
4月1日付で道建設部長に就任した北谷啓幸氏は、北海道建設記者会の共同インタビューに応じ、新型コロナウイルス感染症の影響で「仕事のやり方」が変わる中、業界との役割分担や連携などチームワークを重視しながら、インフラの整備や維持管理に取り組むと抱負を語った。建設産業の持続的発展に向け、週休2日導入といった就業環境改善などにより担い手の確保・育成を推進するほか、Society5・0にも貢献できるよう、さらなるICTの活用などに努める考えを示した。
―就任の感想を。
コロナの影響で、ほとんどの会議が中止や書面開催となり、業界の方々などと会う機会がほぼない状況。しかし、建設部の重要な役割であるインフラの整備や維持管理は、道だけでできるものではなく、さまざまな業界・分野の方々との役割分担や連携が不可欠であり、チームワークが重要となる。今後、変化する「仕事のやり方」の中で、どのようにチームワークを構築・維持していくのかを考える必要がある。
―本道の強靱化をどのように進めるか。
道では、北海道強靱化計画の実効性を確保するため、毎年度アクションプランを策定し、ハード・ソフト一体となった取り組みを推進している。2021年度は、国が創設した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、重要インフラの機能強化や老朽化対策を着実に実施するとともに、大規模自然災害の切迫化に備えたソフト対策の充実・強化などに取り組む。これまで以上にスピード感を持って防災・減災対策などを着実に進めていきたい。
―インフラの老朽化が指摘されているが。
北海道インフラ長寿命化計画に基づき、橋梁やトンネル、樋門・樋管、ダム、都市公園など多くの施設で個別施設計画を策定・改定しており、昨年度には海岸の水門・陸閘(りっこう)についても策定した。対象施設ごとに対策の内容や優先順位を示すことで、トータルコストの縮減や更新費用の平準化を図り、社会資本の保全に取り組む。
―建設産業では担い手不足が続いている。
道では、北海道建設産業支援プラン2018に沿って週休2日の導入や長時間労働是正などによる就業環境改善、ICT活用といった生産性向上の取り組みに加え、教育機関と連携した高校生向け講習会など建設産業の役割、魅力発信を実施している。
こうした取り組みをより効果的なものとするため、道や国、建設業団体などで構成する北海道建設産業担い手確保・育成推進協議会も活用しながら、地域の安全・安心に欠かせない建設産業の持続的発展の実現に向け、担い手の確保・育成を推進していきたい。
―コロナ対策は。
建設部では、工事などは原則電子入札、契約事務は郵送とするほか、昨年度から工事・業務における打ち合わせで受注者から申し出があった場合はウェブ会議等を積極的に活用するなど、接触や密を避けることで感染拡大防止に努めている。
感染拡大防止のための一時中止や工期延長の申し出、予防対策を実施した場合は、発注者と協議の上、工期の延長や請負代金額の変更を行うこととしており、これらの対策は21年度も継続する。
工事現場では、監督員による段階確認や立ち会いなどで情報通信技術を活用した遠隔臨場を試行。21年度は発注者指定型で50件という目標を設定した。当初試行対象外とした工事でも協議の上、発注者指定型で実施することを可能とするなど積極的に取り組んでいく。
―Society5・0とゼロカーボン北海道に建設部として貢献できることは。
Society5・0に関し、建設分野では工事の計画から測量、設計、施工、出来形管理、納品、検査までの施工プロセス全ての段階でICTを活用する対象工事拡大など、全面的なICT活用へ取り組みの促進が求められている。ただ、技術者不足やICT建機導入のコストといった課題に対応していく必要があり、モデル工事を実施する際に設計変更で機械に係る経費を増額するなどICTの活用が図られるよう配慮している。
脱炭素社会の実現に向けては、北方型住宅推進などのほか、水辺再生による水と緑のネットワーク創出といった二酸化炭素の吸収源確保にも努めてきた。
積雪寒冷地の本道は、住宅における暖房エネルギー消費量が全国平均の3倍以上で、二酸化炭素削減には断熱性能の向上が重要な要素となる。昨年2月に新たな基準「北方型住宅2020」を定めたが、建築物省エネルギー法に定める基準を断熱性能で25%以上上回っており、暖房や給湯などで消費されるエネルギー量は20%以上削減することとした。この普及啓発を図ることで住宅分野における二酸化炭素の排出削減に貢献できると考えている。
―今後の抱負を。
地域の社会経済活動が活性化・発展していくためには、社会基盤がしっかりと整備されていることが大前提となる。他県に比べ歴史の浅い北海道は、社会基盤整備が遅れている状況にあり、効率的・効果的な整備をさらに推進する必要がある。
また、長期化するコロナ対応で観光や1次産業など地域経済が大きく疲弊する中、地域の安全・安心や経済・雇用を支える建設産業の役割はますます重要になっている。
道の施策推進には建設業界との連携が不可欠。担い手の確保・育成やICT活用促進など相互に連携し、道民の安全・安心の確保はもとより、道内経済の発展のため、良質な社会基盤の整備に全力で取り組んでいく。
北谷啓幸(きたや・ひろゆき)1963年10月22日生まれ、57歳。旭川市出身。87年に北大工学部を卒業し、道庁入り。土木局河川砂防課長、建設部技監、後志総合局長を歴任し、現職に。
(北海道建設新聞2021年6月2日付1面より)