本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(9)意外に低い葉っぱの彩度

2021年06月11日 09時33分

 北海道にも緑が美しい季節がやってきました。長い冬が明け、地面や枝にともる芽吹きの緑は、待ちに待った色ですし、若い緑が成長していく風景は、心がワクワクします。

 この季節の植物を「緑がまぶしい」「緑が目にしみる」と言い表します。まぶしさを感じる緑色や、目にしみるほどの緑色は実際にどのような色なのか、葉を測ってみました。

 モミジやオンコ(イチイ)の若い葉は、黄みが強く、明度はやや高めで、彩度は7ほどです。黄緑の最高彩度は12。キラキラ輝いて見えるのですけれど、思いのほか低めの値でした。

 数年前、夏のナナカマド、オンコ、アジサイなどの身近な植物の葉を測色したことがありました。植物の種類によって色相は違いますが、どれも春より緑みが強くなり、色相が移動しています。彩度は、およそ5―6。この緑色の最高彩度は11―12なので、夏の葉も意外に渋い緑色でした。

 先日、イチョウの葉のマンセル値が、東京都景観色彩ガイドラインに載っているのを見つけました。緑のイチョウの葉は10GY5/6と表記されています。隣には、黄葉が進んだ黄色いイチョウの値5Y7/8も書かれていて、色相が黄緑から黄色に移っていく様子が数値からもわかります。

 気になる彩度ですが、黄緑は他の葉とほぼ同様の6、黄色の葉は8です。黄色の最高彩度14に比較するとかなり低めの印象でした。イチョウは道内でも街路や公園などでよく見かけます。秋になると黄金色に輝き、インスタ映えすることもあって、とても人気があります。

 春も秋も葉の表面の光の反射や、葉を透過する光の作用が、私たちにまぶしさを感じさせ、その強さが「しみる」感覚につながるようです。植物の葉はどの季節も、イメージ以上に、落ち着いた色を持っているのですが…。

 コーナー1回目で「目立つ色を木や草花に譲ってもいいのでは?」と書きました。咲いている期間が比較的短い花の色は別にして、花木の葉の彩度6―8の値は、外壁色の目安の一つになりそうです。

 2004年に景観法が策定され、全国で景観に関するルールや基準が定められるようになりました。各地の景観色を見ると、色相ごとに明度と彩度の目安があり、私が知る限り、彩度は6を超えることがありません。まるで葉の緑色の彩度「6」と呼応しているような数字です。

 札幌の景観色は、れんがをイメージする赤のグループが彩度8、グリーン系のグループが彩度6、その他は彩度5以下の静かなトーンであることが、限界色票から読み取れます。大きな建物だけでなく、戸建て住宅でも実力を発揮し、植物との相性がよい色がそろっています。手前みそではありますが「だいたい・札幌の景観色」を使うと、選定する色の範囲が広がります。

 北海道で植物の色の変化を楽しめるのは、1年の半分ほど。若い緑から深い緑へ、そして紅葉まで、花木の美しさを感じていたいものです。外壁の色は「彩度6」を超えないことが、植物への礼儀かもしれません。

(北海道建設新聞2021年6月10日付3面より)


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