体重を気にする人には、糖分は大敵。おまけに、取りすぎると糖尿病となる危険性もあり、現代ではとかく敬遠されがちです。しかし、糖分が多く含まれた食べ物、つまり甘い物は、大好きな人も多く、お菓子やフルーツ、飲みものなど、体に良くないと思っていてもやめられないと悩む人も、これまた多いものです。この不思議な糖分について、考えてみようと思います。
糖分は、人にとって、重要かつ効率的なエネルギー源、つまり燃料です。体を動かす力や内臓を働かせる力は、糖分を分解する過程で得られます。体はエネルギー不足に陥ると、力が入りにくくなったり、動きが悪くなったりします。
このように体が思い通りに動かないと感じたとき、人は「疲れた」と感じるようになります。疲れると、休みたくなります。そして、体を休めたところで、エネルギーの再補給を図ります。体が疲れたときに甘い物を食べると、再び元気を取り戻す、といった経験をした人がほとんどだと思います。
この疲労に大きく関係するのが、脳の働きです。実は、脳はその活動に必要なエネルギーのほとんどを糖分の分解から得ています。しかも、脳には糖分を貯蔵する仕組みが存在しないので、血液から常に糖分の供給を受けなければならないのです。
体の糖分が不足してくると、脳は血液からの糖分供給が減るので、エネルギー不足に陥ります。そうすると、脳の活動が落ちてしまい、集中力を失い、注意散漫となり、頭がぼわーっとした感じになります。当然、仕事の効率も下がります。
こうした状況も、人は疲れたと考えるので、体の疲労に脳の疲労が重なる状況が生まれるのです。糖分が不足することは、人にとって危機的状況ともいえるわけです。
そこで、脳は糖分を欲しがります。疲れると甘い物が食べたくなるのは、脳が欲しているからです。そして、糖分を手に入れ、それを口にすると、その甘さを感じるだけで満足し、幸福に浸るようになります。
しかし、これを繰り返すと、一種の中毒性が現れて、甘い物を好んで食べるようになり、さらに、甘い物なしではいられなくなったりします。ついには糖分が過剰となり、肥満、糖尿病に進展する危険性が高まります。心当たりのある方、食生活を見直しましょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)