外国産木材が価格高騰し仕入れ難に 着工戸数低下の懸念

ウッドショックは住宅業界に多大な影響を与えている
(札幌市内の木造建築現場)
「1戸当たり200万―300万円ほど価格上昇せざるを得ないのでは」―。外国産材を活用して住宅を供給する札幌市内の中堅ゼネコンは、木材商社から6―7月に現場に入る外国産材の価格が1・2倍、8月以降は1・5倍になる見込みだと聞かされた。今後、顧客にコストアップについて相談しなければならないとため息をつく。
木材供給の安定性は、会社規模によって明暗が分かれている。東京に母体を置く大手ハウスメーカーは、本社での一括仕入れにより今年分の外国産材は確保しているようだが、道内業者は厳しい状況に足を踏み入れつつある。ジョンソンホームズ(本社・札幌)は、木材価格の高騰などを受け、新築戸建ての一部の商品で値上げの検討に着手した。担当者は、土地や他の建材の高騰も相まって、従来の価格維持は難しいとの見方を示す。
道内の住宅業界はこのところ、コロナ禍から回復しつつあった。国土交通省によると、2020年の戸建て持ち家の着工は前年比6.9%減の1万1090戸。昨春以降の緊急事態宣言などの影響で落ち込んだが、ことしに入ってからは前年を上回っている。戸建て分譲の住宅着工件数は、前年比4.3%増の2707戸と5年連続で増加。立地の良さと手軽な価格が注目された。
しかし、ウッドショックが顕在化したことで住宅着工に暗雲が立ちこめる。北海道住宅都市開発協会の舟橋隆治専務理事は「これまで建て売り住宅を中心に活況を呈してきたが、住宅価格値上げにより購買意欲が薄れれば業界としても問題だ」と危惧する。一度値上がりすれば、元の価格に戻すのは難しい。コストを抑えるため土地・建物の狭小化、札幌市近郊での住宅新築促進、建て売り強化など各社は対応を迫られている。
従来から道産材を利用する工務店には、ウッドショックの影響は見られない。竹内建設(本社・札幌)の竹内哲也社長は「独自の流通ルートを持つため、今のところ材料がないという心配はない」と話す。同じく道産材を使う木の城たいせつ(同・栗山)の吉村直巳社長は「むしろ、これまで高いと言われていた道産材の家に目を向けてもらえるチャンス」と前向きに捉えている。
外国産材の代替品としての道産材に期待する声もあるが、簡単にはいかない。入手ルートの確保に加え、製材工場の増産体制は整っておらず、減少した外国産材をカバーするには至らないとの見方が大半だ。
日本ツーバイフォー建築協会北海道支部長を務めるイワクラホーム(本社・札幌)の蓮井美津夫社長は「多くのメーカーが一時的に国産材を求めても、仮に外国産材の価格と供給が落ち着けばそちらに戻るだろう」と指摘。住宅業界として安定した量を利用し続けなければ、道産材は根付かないと提言する。
木材を調達することができなければ家を建てることはできない。新たな地域で流通ルートを確保するのか、国産材が安定供給するまで待つのか、いずれにせよ、これまでの市況とは大きく異なる現実がある。住宅事業者は生き残りを懸けた経営手腕が問われている。
(北海道建設新聞2021年6月10日付1面より)