本道特有の業界事情が浮き彫り 持続可能な木材利用へ
本道の木材産業にウッドショックはどう影響するのか。道産材のほとんどは、緩衝材やパレット材、羽柄材などの産業用部材に加工されている。住宅産業での外材不足とは関係が薄いようにも見えるが、道内の製材業者も変化を如実に感じ取っている。
主として梱包(こんぽう)材やパレット材を製造する関木材工業(本社・新得)では1月以降に7、8件、取引のない業者から問い合わせがあった。山内ゆかり社長は「長い付き合いの客を相手にしていて、新規の客がいないので珍しい」と話す。
同社は道産トドマツ間伐材を活用した国内初の国産ツーバイフォー工場を設立した企業として知られ、従来も外材価格が上がるたびにツーバイフォーに関する問い合わせはあった。だが、ウッドショック下で従来と異なるのはツーバイフォー材以外を求める声だった。
コロナの影響で下火だった産業用部材の需要は徐々に回復が進む。しかし中小企業が主体の道内木材業では原木供給量が限られ、既存客の対応だけで関の山。北海道木材産業協同組合連合会の内田敏博副会長は「そこに来てウッドショックが発生し、特に東京方面から羽柄材のニーズが急激に出てきた」と指摘する。

ウッドショックを機に、
持続可能な木材産業に向けた真価が問われる
ウッドショックで梱包材も世界的に品薄。道産材にも目が向けられ始めたが、道内の木材は基本的に得意先との相対取引だ。値段は信頼関係で成り立ち、道内の木材価格上昇を妨げている。需要があるからといって、道内木材業の利益が上がっている状況ではない。
そもそも、道産材が主に産業用部材となっている現状にはさまざまな事情がある。道外はスギやヒノキが育つ環境にある上、江戸時代から続く造林で技術や品種の改良が進展。質、量ともに構造材に適した素材をある程度自給できる。
一方、ほとんどが戦後造林である道内の人工林資源では、太く長い形状の木材を切り出せない。構造材として植林されたトドマツはスギと同等の強度を持つが乾燥技術が難しく、歩留まりも悪いのが課題。元は炭鉱の杭材だったカラマツは閉山で需要が減り梱包材や桟木(さんぎ)として何とか使ってきた。こうした背景もあり、道産材はあまり建築に用いられず、輸入材が入り込んだ経緯がある。
内田副会長は「米材やカナダ材、欧州集成材は品質に優れ、安価に入ってくる。工務店がそれを優先的に使うのも商売のやり方」と話すが、「それをずっと続け、リスク管理してこなかったことがこういう状況につながった」と指摘する。
SDGs(持続可能な開発目標)のゴール12は「つくる責任、つかう責任」。その指標に、自らの国や地域の素材をどれだけ使ったかを示すDMC(ドメスティック・マテリアル・コンサンプション)がある。林産業を取り巻く諸問題に詳しい東京農大オホーツクキャンパスの黒滝秀久教授は「国産材を使用していくことはSDGs政策の面で重要」と強調する。
「構造材がほとんど作られていない本道を変えていかなければならない」と内田副会長。「自国のものを上手に使っていく世界をつくっていきたい」と将来像を語る。
古くから循環資源として人間生活を豊かにしてきた森林。ウッドショックは、木材や木材産業の在り方を見つめ直す契機なのかもしれない。
(北海道建設新聞2021年6月11日付1面より)