試される木造 道内へ忍び寄るウッドショック

 コロナ禍を受けた米国や中国での木材、住宅需要増、DIYブームなどが引き金となって発生した「ウッドショック」。外国産木材価格の高騰や仕入れ難を呼び込み、住宅事業者を中心に大きな影響を与えている。ウッドショックの構造をひもとくとともに、対応に追われる道内企業の最前線に迫った。

試される木造 道内へ忍び寄るウッドショック(下)米中の旺盛な実需背景

2021年06月23日 12時00分

コンテナ不足、海上輸送コスト上昇 先行き不透明感に困惑

 「資材価格の上がり下がりは何度となく経験してきたが、今回のような事態は初めて」。札幌市内の住宅メーカー社長はウッドショックの先行き不透明感に困惑する。消費木材の6割超を輸入に頼る日本。供給元は中国やEU諸国をはじめ東南アジア、北米など広範に及び、海外動向に価格を左右されてきた。今、世界で何が起こっているのか、各種データを検証する。

 価格急騰の主因として最も指摘されるのが、米国の旺盛な住宅需要だ。米国勢調査局によると、住宅着工件数はリーマンショック直後の2009年に底を打ってから今まで一貫して増えている。特に20年は前年比7%増の138万件と、リーマン直前の水準まで回復。住宅ローン金利の低さに加え、コロナ禍による在宅勤務の広まりが影響しているという分析が一般的だ。21年以降もコロナ前の水準を超えて推移し、需要が減る兆しは見られない。

 米国の材木先物価格が上がり始めたのは19年6月ごろから。コロナが顕在化した昨春こそ下がったもののすぐ上昇トレンドに戻り、米ナスダック市場では約2・36m³当たりの取引価格はことし5月、一時的に前年同月の4倍を超す1670・5㌦を記録した。6月11日現在は1100㌦台だが、極めて高い水準にあるのは変わらない。

 影響は各国に波及している。英国の政府系研究機関によると、針葉樹丸太の価格指標はことし3月に前年同月より15.4%高かった。フィンランドにあるヨーロッパ森林研究所の担当者は「多くの欧州産材がアメリカなどに向かい、欧州での木材不足と価格高を起こしている」とコメントする。

 もう一つの主因とされるのが中国の経済発展だ。中国国家統計局が公開する新築住宅着工(床面積ベース)は、20年こそ前年比1.2%減だったが、ことし1―4月は12.8%の大幅増となった。米国同様、国内需要の盛り上がりがうかがえる。

 中国は日本にとって最大の木材輸入元の一つだが、中国産材は拡大する内需に向かう。日本の林野庁の資料によれば、10―19年の間に中国の年間製材消費量は2・5倍、生産量と輸入量も倍以上に増えた。その半面、輸出額はおおむね横ばいを保っている。最近は供給国であるオーストラリアとの関係悪化、ロシアの丸太禁輸措置を受け、今後中国は年間1300万m³の丸太を別の地域から調達しなければならないという。

 海上輸送コスト上昇も指摘されている。日本海事センター(本部・東京)によると、欧州や米国発の横浜向けコンテナ運賃は20年11月ごろから急上昇し、現在も高値を保つ。同センターや林野庁は、米国の輸入増、コロナ禍に伴う港湾処理能力の低下などから北米でコンテナが滞留し、アジアでコンテナ不足が続いていると分析。同センターの後藤洋政研究員は「運賃は当面、昨年以前の水準へと下がる状況にはない」と話した。

 米中両大国の実需に端を発し、本道の住宅建設や木材業界にも混乱を及ぼすウッドショック。中長期的な国際動向を見据えた経営のかじ取りが、一層重要になってきている。

(この連載は経済産業部の宮崎嵩大、高田陸、帯広支社の阿部みほが担当しました)

(北海道建設新聞2021年6月12日付1面より)


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