北大や東大の研究者らによるプロジェクト(PJ)チームが、廃コンクリートとCO₂からつくる新しいコンクリートの技術開発を進めている。廃コンにCO₂を吸い込ませて炭酸カルシウムを析出させる手法で、実用強度を有するコンクリート製造を目指す。原料開発の中心を担う北大工学研究院建築都市部門の北垣亮馬准教授は「地場の業者が持つ機材や技術で原料を作れるような手法を開発したい」と話している。

開発した技術で生成した硬化体(東大提供)
PJチームによれば、セメント生産は、人間由来のCO₂の約5%を排出しているといわれ、実用化すれば建設業のカーボンニュートラル進展につながる。
コンクリートに含まれるカルシウムは、大気中のCO₂を吸収する性質を持つが、範囲は表面から数cmまで。吸収余力のあるカルシウムを多く保持したまま、廃棄されてしまう。
廃コンの再利用法は破砕処理して路盤材などに使うのが一般的だ。再生コンクリートの原料となる場合もあるが、PJチームの北垣准教授は「凍害に弱いため道内ではほとんど使われていない」と話す。再生コンクリートには新しくセメントを混ぜるため、CO₂削減の点でも課題が残るという。
PJチームは、この素材研究をカルシウムカーボネートコンクリート(CCC)と呼び、2020年から開発を始めた。廃コンが過去に排出したCO₂と最大で同程度の量を吸収・固定できるカーボンニュートラルな素材を目指している。繰り返しリサイクルも可能だという。
原料開発、製造、社会実装という3つの研究が並行して進む。

CCC原材料の製造用テストプラント(増尾リサイクル提供)
原料開発の研究では、廃コンの粒度や表面積、湿気などを調整して最適なCO₂吸収効率を探っている。研究室や増尾リサイクル(本社・東京)のテストプラントで、熱風や水をかけるなどの方法を試している。
製造段階では、CO₂を吸収させた原料をカルシウム溶液に浸すことで炭酸カルシウムを析出させ、隙間を埋めて強度を高める。東大の丸山一平教授らが研究の中心だ。
北垣准教授によれば「実用の7割程度の強度」は実現している。今後の目標は23年までに実用強度を満たし、30年までにCCCを使った建築物を建てることだ。
PJチームによると、50年に全国のコンクリートの半分がCCCになれば、年間2000万㌧のCO₂排出削減に加えて、年間620万㌧の固定化が可能になると考えられる。北垣准教授は「実用化できれば建設業は排出CO₂の多くを自ら回収できることになる」と意義を強調する。
高度経済成長期から約50年が過ぎ、解体・更新を控えるコンクリート建造物は多い。その廃棄物がCO₂減に貢献し、再び建設資材として活用される未来に向け、研究の進展が期待される。
(北海道建設新聞2021年6月18日付3面より)