乱立するライブハウスの配信 独自の工夫で違いを創出

2021年06月26日 10時00分

独自システムや再生時間分割、現地と

 新型コロナウイルスの感染拡大で音楽業界が大きな影響を受け、厳しい状況が続くライブハウス業界。道内でもイベントが減り、密状態を避けた集客を続ける中、多くの施設が公演のネット配信に力を入れる。事態が長引いて配信が乱立する中、演出の高度化や利用者のコミュニティーづくりなど、他との違いを出そうとする取り組みが本格化している。

PLANT

 3月に札幌市北区で開業したばかりのライブハウス、PLANT(プラント)。コロナ禍で昨春閉店した人気施設の元店長らが立ち上げたことで音楽ファンの関心を集める一方、同業者の注目を浴びているのがライブ配信の仕組みだ。ユーチューブなど配信サービスを使う施設が全国でも一般的だが、独自のシステムで配信をする。

特別会員になることで限定映像を見ることができるPLANT FC

 既存サービスは配信内容の制約が細かく、問題のなさそうなコンテンツでもサービス提供側の判断で配信できなくなったり、削除されたりする懸念がある。コロナ収束後もライブ配信が続くと考えた同店は、自らバンド活動をしていたエンジニアの協力を得て約3カ月かけて音や映像が途切れがないシステムを独自開発。視聴者からも好評だ。

 開業と同時に店自体のファンクラブ「PLANT FC」を組織し、会員向けサービスとして配信を開始。入会は無料で、月額税込み500円の特別会員になることでリアルタイム配信など限定映像を見ることができる。前身の施設「COLONY(コロニー)」が道外にも知られるライブハウスだった背景があり、開業資金の一部はクラウドファンディングで調達した。21日時点で道内の音楽ファンを中心に約700人が会員登録している。小野寺司典代表は「北海道の音楽を全国に届ける手段としても配信は重要な役割を果たす」と話す。

BESSIE HALL

 ススキノ地区のBESSIE HALL(ベッシーホール)は、音楽ライブを複数の動画に分割編集し、ユーチューブで配信している。一般的に公演の長さは1時間以上で、出演者が複数のイベントだと数時間に及ぶ。そのまま長時間配信するとスマートフォンなどでの視聴には長すぎるため、数曲ずつに分けるなどで1本当たりの再生時間を10分強にした。視聴者が目当てのアーティストや曲を探しやすくする狙いだ。

 本州からのプロの演奏家によるイベントを多く開催していた同店だが、アマチュアのイベントも収益の柱となっている。演奏への熱意を保ってもらうため、定期的に配信ライブを開催。竹田敦代表は「音楽活動を続けてもらうことで、コロナ収束後のホール利用につなげたい」と期待を込める。

CLUB ANiMA

 コロナ禍ならではの追い風に乗ろうとするのは、同じくススキノのCLUB ANiMA(クラブアニマ)だ。在宅時間が長くなり、DJに挑戦する人が増えたことに着目。自宅などから動画投稿している人に声を掛け、イベントを定期的に主催・配信するようになった。

Sound Lab mole

 狸小路にあるSound Lab mole(サウンドラボモール)の大嶋智洋ブッキングマネジャーは「単純な配信は飽きられてきた」と指摘する。同店では、演奏者のいるステージの前に半透明スクリーンを置いて動画を流し、双方を重ねて映像化するなど演出にこだわる。地元人気バンドによるトークイベントの生配信も定期的に開催し、ユーチューブチャンネルの登録者数は現在1300人だ。

 どのライブハウスも配信によって出演者との関係性や観客の気持ちを維持しながら、コロナに負けず、音楽を届ける取り組みを続けている。

(北海道建設新聞2021年6月22日付3面より)


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