新球場軸に多様な体験を提供
開業まで2年を切った北海道ボールパークFビレッジ(BP)。北海道日本ハムファイターズの新球場を軸に多様な施設が並ぶ。事業当初から携わるファイターズスポーツ&エンターテイメント(FSE)の前沢賢氏は「BPが完成することはない」と語る。開発に込めるこだわりを聞いた。(建設・行政部 瀬端 のぞみ記者)
―工事が着々と進んでいる。
民間発注、行政発注と混同する中、現場を調整しながら進めてもらい感謝している。新型コロナウイルス感染症は構想自体に影響がなく、スタート時点から入れるべきと描いていた施設に変更はない。もともと球場内のコンコースなど、広すぎるというぐらいゆとりを取っていたため設計変更もない。
BP内で事業を展開するのは、道外企業7割、道内企業3割ほど。道内で実績のある企業が集まってくれた。ことしの夏ごろから、具体的な企業や事業内容を徐々に公表できると思う。
―新球場のこだわりは何か。
まず、選手やチームがパフォーマンスをする熱量が建物に遮蔽(しゃへい)されてしまい、外に出ていかないことに違和感があったため、その熱量が派生できるようにした。また、知らない場所を歩くストレスで疲れないようにしたかった。それに高齢化社会は拒めないため、球場内にエスカレーターを多く設置して歩きやすいようにした。 ほかにも、北海道らしい自然豊かな環境としたいし、建物には一つも白を使わずダーク系やウッド系にそろえて冬でも外観の価値が下がらないようにした。こだわりはたくさんあり実現率も高い。
―北広島市との関係は。
お互いに大変さを理解しているが、遠慮は全くしていない。変ななれ合いもなく、良い信頼関係を築けている。JR北広島駅西口再整備の事業者決定はうれしいが、まだ何かを成し遂げたわけではない。新球場を建設することに協力する行政に対し、やって良かったと言ってもらえることが一番の成果。
―企業が自治体と連携する意味は。
民間企業は外部ネットワークが広く、自治体は狭いと考える。そこを補完できる民間企業と組む自治体にメリットがある。例えば、われわれも球場だけぽつんとあるというのは絶対に避けたかった。周辺にホテルや病院、教育機関などを誘致するということはお互いに相乗効果がある。札幌市と新千歳空港を結ぶJR千歳線沿線はすごくポテンシャルがある。BPを自分たちのまちづくりに役立ててほしい。応援してくれている市町村に少しでも恩恵があったらうれしい。
―目指す姿は。
北海道にこれがあって良かったと思ってもらえるためにどうするか、追求するのにゴールはない。常に時代に求められる新しいもの、体験を提供できるようにする。まずは開業を成功させるのが一番だが、JR新駅開業後など、先々にも施設を増やしていくのは想定している。
新球場建設に向けた視察で、ニューヨーク・ヤンキースの副社長から「自分たちがやりたいことを言った方が良い。ひるんではだめ」と背中を押された。ボストン・レッドソックスのフェンウェイパーク、シカゴ・カブスのリグレーフィールドはどんどん土地を拡張し、周辺開発にも取り組んでいた。自分たちがやりたいことを実践する姿を見て、方向性は間違っていないと思った。野球をなりわいにしている会社がどの程度できるかというチャレンジでもある。それには十二分な舞台をいただいた。まちづくりにおいても地場企業として挑戦したい。
前沢 賢(まえざわ・けん)1974年5月4日生まれ。東京都出身。中央大院修了。2015年からBPプロジェクトに携わる。準備会社を経て19年FSE設立、20年1月から現職。北海道日本ハムファイターズ取締役も務める。
(北海道建設新聞社2021年6月24日付1面より)