深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り カンディハウス 染谷哲義社長

2021年06月28日 10時00分

染谷哲義社長

道産木材比率5割以上に

 高級家具メーカーのカンディハウス(本社・旭川)は、地元の素材と技術を生かした製品作りという創業の原点に立ち返り、道産材活用比率を半分以上に引き上げる。3月に社長に就いた染谷哲義氏(56)は、コロナ禍でのインテリア需要の高まりに「大量消費・大量購入ではなく、良いモノを長く使う時代」と説く。100年後も残る持続可能な家具作りや新たなブランド戦略への考えを聞いた。

 ―リブランディングに力を入れているが。

 マーケティング本部長としてブランディングに関わってきたが、2018年に50周年を迎え、次の100年に向けた課題として〝どういったことをカンディハウスは考え、取り組み、社外に意思表示するか〟を重点的に進めたい。

 創業者はドイツで技術研修生として修行を積んだ際、北海道のミズナラがヨーロッパに輸入されて高級家具の材料になっていることに衝撃を受けた。そこで〝北海道の木、旭川の技術・デザインで世界に向けて家具を作る〟という思いで起業した。リブランディングの核にはこの精神がある。

 ―具体的には。

 カンディハウスはこれからも北海道の森と生きるブランドストーリーを掲げ、道産広葉樹の活用比率を全体の5割以上に引き上げることを決めた。昨年は39%だったが、1―3月末時点で50%近くに迫っている。

 5月1日には北海道のミズナラの木をモチーフにしたロゴマークを新たに作った。イメージカラーも赤から緑に変え、言葉ではなくビジュアルでブランドイメージを認識してもらえるようにした。また、カタログや全国に展開しているショップの商品展示を、われわれが提唱する生活空間、ライフスタイルを再現したレイアウトに変えた。

 ―コロナ禍の影響と打開に向けた戦略を。

 各地のショールームが一斉に閉鎖した昨年は、4月に業績が大きく落ち込んだことで危機意識を持った。GoToトラベルや巣ごもり需要の後押しもあり、下半期に持ち直したが、前年比ではダウンだった。

 在宅時間が増えたことで、新規の家具購入だけでなく、特に張り替えや修理の需要が一気に高まった。旅行や外食の費用がインテリアに向いてきた。コロナ禍でかえって、大量消費の時代から、良い物を長く大切に使うという当社の理念に近い形に消費者の意識が変わってきている。

 当社の家具は決して安くないことから、店頭で見て決めてもらうのが前提だった。しかし、昨年オンラインショップを立ち上げた。オンラインで検討後、全国主要都市に構えるショップに来店してもらった結果、購入までの決定率が2、3倍になった。

 また、営業が得意先のコーディネーターや設計者に売り込む手段として、スマートフォンで主力商品を撮影してコメントを入れた動画を作成するなど、情報発信をブラッシュアップした。

 ―ウッドショックの影響はあるか。

 半分は海外産ウォールナットなどのため、影響は出始めている。道産広葉樹に需要が集まれば価格にも影響が出かねない問題だ。当社が所属する旭川家具工業協同組合は、地元の山で伐採した木を用いる「ここの木の家具・北海道プロジェクト」に取り組んでいる。地元調達の比重が高いことは、旭川家具の最大の強みにしたい。

 道産広葉樹は一度資源が枯渇したため、小径木が多い。強度の確保や見た目の技術的改善も重要だが、節や割れは天然素材の証しとなる。そうした価値を発信することもリブランディングのテーマだ。

(聞き手・千葉 有羽太)

 染谷哲義(そめや・のりよし)1964年12月8日生まれ、東京都出身。明治学院大法学部を卒業。96年に旧インテリアセンター(現カンディハウス)に入社。2020年に専務取締役営業本部・企画本部統括、21年3月から現職。

(北海道建設新聞2021年6月25日付2面より)


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