最近、街の喫煙ブースが閉鎖されているのをよく見かけます。コロナ禍での喫煙ブースの使用は非常に危険だと、かねて危惧していましたので、やむを得ないと考えています。あらためて、その危険度について考えてみましょう。
まず喫煙中は、常にマスクを外しています。タバコを吸う時にマスクは着けられません。そして煙を吐き出す時、マスクを着けてから吐き出すこともないでしょう。吐き出された煙の中には、大量の飛沫(ひまつ)が含まれていますので、もし、感染していれば、高確率で人にうつすことになります。
タバコの煙は高温で、ウイルスは死ぬのではないかと誤解している人もいますが、ウイルスが死んでしまうような温度の煙を吐こうとしたら、その人はのどや口、鼻に大やけどをするはずです。吐き出せる温度の煙の中ではウイルスは元気です。一方、タバコの煙は有害だから、ウイルスは死滅すると、頓珍漢(とんちんかん)なことを言う人もいますが、そんなに有害だったら、喫煙者は全員とっくに死亡しているでしょう。
こうして吐き出された煙は周囲に漂います。飛沫はマイクロ化され、エアロゾル化します。ブースの中にいる人は、みんなエアロゾル化した空気を吸いながら呼吸します。場合によっては、ある人が吐き出した煙が、隣の人の顔に直接かかったりします。もう、どれだけのマイクロ飛沫を吸い込むことになるのか、考えただけでも恐ろしくなります。
そして、喫煙ブースは、煙を外に出さないよう、密閉空間になっています。ブース内の空気をなるべくきれいにしようと、空気清浄機が動いていますが、空気清浄機は人と人の間に設置することはできませんので、一人の人から出た飛沫は、清浄機に吸い込まれる前に、他の人に確実にかかり続けます。空気清浄機は無力です。このような狭いブース内に、人がたくさん群がって、数分から十数分、喫煙し続けるのです。まさに、密閉、密集、密着の三密状態なのです。喫煙ブースは、全面的に閉鎖すべきです。
このようなことから、コロナ禍を契機にして禁煙をすることが得策なのですが、どうしても、喫煙を続けたい人は、全く開けた外の空間で、一人で喫煙するしか方法はありません。断じて、友人と一緒に喫煙してはいけません。不特定多数が集まる場所はとりわけ危険です。喫煙という行為自体、危険だと思ってください。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)
(北海道建設新聞2021年6月25日付3面より)