崩壊の可能性ある斜面、複数存在
函館開建は29日、通行止めが続く乙部町館浦の国道229号で土砂崩れの災害現場を報道機関に公開した。崩壊する可能性がある斜面が他にも複数存在しているほか、岩盤に残る不安定な土石を取り除く場合の工法やその分量など、調査・検討を重ねなければならない要素が多岐にわたることなどを説明。応急復旧の方法もそれらを踏まえた検討が必要で、通行止め解除の時期がいまだに見通せない深刻な状態となっている。(函館支社・鳴海 太輔記者)
23日に開いた229号乙部町館浦斜面対策技術検討会の内容を踏まえ、畑山朗次長が解説した。
今回の災害では、画像解析などから斜面の岩盤2900m³が崩壊したと結論付けた。畑山次長は「風化しやすい層が水平に何層も重なっている。水が亀裂に入り、凍結と融解を繰り返して亀裂を広げたのが崩壊の原因ではないか」と現時点での見解を説明した。
発災後の調査では、この一連の斜面で崩壊部を含め8カ所の不安定な部分があることも判明。特に、崩壊部の近くには約7000m³の土砂が崩れる可能性が高い箇所も存在している。
応急対策としてはまず、現地の安全確保に向けて崩壊部周辺の不安定な、いわゆる「落ち残り部」の除去を検討会へ提案している。しかし、「浮き石のように簡単に取り除ければいいが、大きな塊の場合にはどうするのかなどを考えなければならない」と実現への道のりの遠さを語った。
加えて、海側の旧道部を使った仮道の設置と、崩壊土砂を用いた仮道保護のための土堤形成といったプランも紹介。「(大規模崩壊がさらに発生した場合に)土堤で守れるのかなどのシミュレーションが必要。仮道を現道のどの部分に取り付けるのかも判断が難しい」とした。
今後はさらにクライミング調査などに取り組む方針。岩盤のサンプルを採取して成分の分析もする。亀裂の状態などと合わせて岩盤の安定度を調べ、検討会の第2回会合で対策方法を諮る。
畑山次長は「斜面の状況をしっかり判断して安全に車を通せるようにするべきと検討会から指示されている」と応急復旧に力を注ぐ意向を強調。その上で「線形が悪く道幅が狭いのを何十年もそのままにするわけにもいかない。斜面をどうするのか、どういう道路にすべきかという恒久対策についても考えなければならない」と話した。
(北海道建設新聞2021年6月30日付1面より)