生活に「安心」を生む仕事
北海道ビルメンテナンス協会は、ビル清掃や建物保全、空調、電気設備を管理する会社などでつくる組織だ。札幌地区は他地域に比べて物件数が多く、道内最多の会員数を誇る。コロナ禍で建物清掃や維持管理に関する重要度が増す中、6月7日の理事会で札幌地区協議会の新会長となった田中芳章氏に現状や今後の抱負を聞いた。
―札幌地区協議会について。
札幌は正会員93者、準会員4者、賛助会員14者の合計111者で全道の半分近くを占める。札幌のほか、江別や小樽、北広島、岩見沢、千歳など広域のためだ。
―業界の現状を。
ビルメン業は清掃と設備の維持管理がメインの仕事。いわゆる〝エッセンシャルワーカー〟を多く抱え、どちらかと言うと脚光を浴びにくい。医者や弁護士らの働き場所を支える非常に大事な仕事をしているが、なかなか社会的に浮かび上がらない。
清掃しなければ病気になりやすいし、設備が止まるとテナント入居者の仕事に影響を及ぼす。こういう時代だからこそ、社会を動かす大事な仕事ということをアピールしたい。
―認知度が上がらない原因は。
業界としての歴史の浅さがあると思う。全国ビルメンテナンス協会が設立されたのは1966年で、建設業に比べ歴史が圧倒的に浅い。
いわゆる〝掃除のおばさん〟と〝設備のおじさん〟による業界のため、人が育たないのも要因だ。設備は定年退職した人がボイラなどの資格を取って勤める感覚があり、生え抜きのプロが少ない。単価が安いため、どこも大卒者を雇うほどの余裕はないはず。残念ながら人が来ない・育たないというのが現状だ。
―課題は何か。
賃金の安さ。警備業に比べて資格制度が充実していないのも社会的地位向上に至らない要因の一つだろう。裏を返せば誰でも参入しやすく、価格競争に陥りやすい構造もある。「安かろう悪かろう」では業界が育たない。
資格制度のしっかりした協会の会員企業に仕事を任せれば安心だという土台作りができればと思う。安心感をコストに反映できる業界環境を築ければ理想だ。
―コロナ禍で注目されている業種では。
会員の中でも、新型コロナウイルス感染者が発生した建物の消毒を手掛ける会社があり、全国ビルメン協会も感染症対策を踏まえた宿泊施設の清掃マニュアルなどを発信している。最近はしっかりとした処置を提供できるよう、資格制度の議論が出てきた。ビルメンテナンスは厚生労働省管轄のため、公的なコロナ対策の資格制度やルール作りがあっても良いと思う。
コロナ禍でも安心してホテルや温泉に泊まれるのは、しっかり清掃やクリーニングし、感染しにくい状況をつくっているから。国民が安心して暮らせる環境をつくっていることを、もっとアピールすべきだ。
―当面の目標を。
いろいろな情報を会員に発信する一方、会員からの要望を吸収し活動に生かしたい。母体の道ビルメン協会や全国ビルメン協会を動かしながら、社会的地位の向上を図ることも目標だ。札幌地区協議会の存在感を高めたい。
(聞き手・佐藤 匡聡)
田中芳章(たなか・よしあき)1952年2月生まれ、室蘭工大機械工学科卒。76年に札幌市に入り水道局に配属。都市局機械設備課長や財政局工事管理室長などを経て、2009年に水道局給水部浄水担当部長。退職後は11年4月から札幌施設管理の社長を務める。
(北海道建設新聞2021年7月1日付2面より)