重力、真空環境を走行
月探査車を開発するダイモン(本社・東京)は6月30日、開発中の月面探査車「YAOKI」の実証実験をした。植松電機(本社・赤平)の実験装置を用いて、月と同程度の重力環境と真空環境を走行。ダイモンによると、これらの環境で探査車を走行させる試みは日本初だという。2022年初めに予定する民間世界初の月面探査に向けた一歩を踏み出した。
YAOKIは幅と奥行きが15cm、高さ10cmの小型二輪ロボットだ。両手に乗る大きさで重さは500㌘。車輪が特徴的で転んでも走行を続けられる。「七転び八起き」から命名した。車輪の間にカメラを備える。
実験は直方体のケースを5mの高さから落下させ、地球より小さい月と同じ程度の重力を1秒ほど再現。ケース内のYAOKIを走らせることに成功した。続いて真空環境の実験でも走行可能なことを確かめた。
ダイモンは22年初め、米企業の商業月運送サービス(CLPS)でYAOKIを月まで運び、探査を実施する。成功すれば日本初、民間企業としては世界初で、世界でも米ロ中の3カ国しか成し遂げていないという。
月面ではWi―Fiなどで地上から遠隔操作し、コマ送りレベルの動画を撮影。地表面下の水資源や、居住場所となりうる洞窟内部などを探査する。
探査車輸送のCLPSは、NASAが月面基地の建設などを目指すアルテミス計画の一環。ダイモンも関わり続けたい考えで、多数のYAOKIによる連携探査を目指す。
ダイモンは、ボッシュなどで自動車の駆動開発に取り組んだ中島紳一郎社長が12年に設立。中島社長は「月面探査くらいは個人の集まりでもできる時代になったと感じ取ってほしい」と話している。
(北海道建設新聞2021年7月1日付12面より)