会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 岡田建具製作所 「若い力」で新たな風を

2021年07月08日 12時00分

副業制度 意欲向上きっかけに

 岡田建具製作所(本社・恵庭)は、道産木材を中心としたドアや収納棚などを製作する造作建具・家具の会社だ。機械化を20年ほど前から段階的に進め、業界では珍しい平均年齢42歳の若い職場環境を築いている。小泉雅博社長は2代目で、外資系保険会社からの転身という異色の存在。ものづくりへの思いは熱く、長年培った技術力と信用力に、開発力や提案力を掛け合わせることで、新たな風を巻き起こそうとしている。

複雑な形状にも対応するCNC5軸ヘッド加工機

 1967年5月に現会長の岡田守さんが創業した。70歳を越えた頃、親族内や社内に後継者候補がいなく、事業承継の不安を抱く。M&Aではなく、信頼できる人に後を託したいという思いから、内閣府のプロフェッショナル人材事業を活用した。

 選考の結果、小泉さんを2018年に招き入れた。それまで外資系生命保険会社でアカウントマネージャーなどを務めていたが、「企業経営をやりたい」という昔からの思いがあって、人材バンクに登録。岡田建具製作所と出会う。専務として岡田さんの片腕として働き、20年12月に社長を任される。

 商品はドアやロッカー、引き戸、洗面台、欄間など。大手メーカーによる既製品と熟練職人による超高級品の中間に位置する、造作家具造りが同社の特徴。最新設備とソフトウエア、若手従業員の経営資源を最大限に生かす。

 工場内には大型の加工機器が並ぶ。うち伊・BIESSE社のRover A 1632は、曲線など複雑な形状にも対応可能なコンピューター数値制御の5軸ヘッド加工機。独・HOLZ-HER社のSprint 1327 Massivは、力強く信頼性の高い仕上げ作業ができるコンピューター制御による自動縁貼機だ。

信頼性の高い仕上げ作業ができる自動縁貼機

 機械化をコツコツ進めた結果、若手従業員の活用につながり、平均年齢42歳、製造部門だけで見ると39歳というフレッシュな体制を築くことができた。安全面にも奏功し、一昔のようにのこぎりで指を切るなどのヒューマンエラーは皆無に等しい。

 顧客は高級注文住宅を手掛ける工務店や賃貸マンションの設計施工会社など。造作建具は物件の差別化につながったり、現場で微調整できるのが長所。一方で最近は取り付けを担う外注業者が高齢化し、受注可能量に制約が出つつあるのが課題だ。

 小泉さんは「製品をモジュール化するなど現場の取り付け負担を軽減できれば、北海道だけでなく、全国の仕事に対応できるようになる。機械化が進んでいるので、顧客からデータをもらって再現度の高い製品を作れるのも強み。既存の取引先に影響を与えない形で、販路を拡大できないか考えている」と話す。

 今期から社内ベンチャーに似た副業制度を始めた。社員と業務委託契約を結び、エンドユーザー向けの新製品を開発・製造・販売してもらう。申請して認められれば、社員は業務終了後に工場内の加工機を使ったり、場合によっては新型機を導入してもらえる。販売開始から1年間は、売上額の10%を成功報酬として得られる。

 「社員には〝会長は業歴が長いので間違わない。俺は間違うので、自分たちで積極的にやらないと変な方向に行く恐れは十分にある〟と話している」と小泉さん。そんな警鐘が効いたのか、ここ最近は自主的に動く若手が多くなってきたとか。

 「ものづくりを自由に楽しくできる環境が整ってきた」と鈴木潤也取締役。技術リーダーの長谷川徳威さんは「今までは、商品を作りたいという意欲が社員間で欠けていた。副業制度は意欲のきっかけになりそう。活動を引っ張り、取り組んで良かったという新製品を作りたい」と話していた。

(北海道建設新聞2021年7月5日付3面より)


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