「観察」して「比較」 三笠市で「ポケモン化石博物館」

2021年07月13日 10時00分

カセキポケモンをこの目で 「情熱」が呼び込む成功へのヒント

 三笠市立博物館で開催中の「ポケモン化石博物館」が盛況だ。初日4日は、入場600人の枠が予約開始5分で埋まった。ポケットモンスターと連携した特別展で、同博物館主任研究員の相場大佑さん(31)が発案。〝三笠発〟の企画は、国立科学博物館など全国を巡回する予定となっている。

 ポケモンには、古生物のような姿の「カセキポケモン」がいる。特別展ではティラノサウルスに似た「ガチゴラス」の骨格想像模型など、カセキポケモンに関するアイテムを実寸大で展示。実世界とゲームの世界が交差する空間となっている。

ガチゴラスの骨格想像模型を前に解説する相場主任研究員

 発案者の相場さんは、東京都出身で、1989年生まれの初代ポケモン世代。「ポケモンが実在したら面白いのに」と、実世界とゲームの世界と比べながら、想像を膨らませる毎日だった。

 他に好きだったのが恐竜や化石。大学では数学を学んだが、幼い頃感じたロマンを追い求め、横浜国立大大学院に進み、アンモナイトの研究にのめり込んだ。「目の前に研究対象の実体があり、観察できることに感動した」と振り返る。三笠市内で発掘作業をしていた縁もあって、2015年に同市立博物館に就職した。

 18年夏に特別展を考案する中、ポケモンの実在を願った少年時代の思いと大学院時代の体験が結び付き、カセキポケモンを実世界で表現するアイデアが生まれた。

 株式会社ポケモン(本社・東京)への提案に向け、同社の企業理念やこれまでの事業展開を学んだ。これを念頭に置きながら計画を練り、半年後の19年2月に企画書を電子メールで送った。

 数日後返信が届き、実現に向けた協議を開始。「意味のある展示を」という石原恒和社長の意向を受け、「コンテンツにあやかる形でなく、来場者に新しい体験を提供する」との方針を固める。

 考えたのが「観察」「比較」という科学研究の基礎的手法を体験する展示。ポケモン世界の「カセキ博士」と、相場さんをモデルにポケモン社が作成した「アイバ博士」が、世界の古生物をパネルや模型、化石を通して比較・解説している。古生物の最新研究結果とポケモンを並べることで、子どもたちがイメージしやすいよう工夫した。

 4月の開催発表後すぐに話題となり、来場予約や、全国の博物館からの巡回展示に関する問い合わせが絶えない。成功の秘訣(ひけつ)を「田舎だからとか予算が厳しいとか、限界を決めず挑んだこと」と分析。また、多くの人に届けたい「モノ」への情熱が必須だと説く。「徹底的に理解し、そこに含まれるさまざまな要素を挙げれば、面白い案に結び付くヒントが隠れている」と指摘する。

 特別展は9月20日まで。「子どもの頃の自分がこの展示を知ったら、目を輝かせて喜ぶと思う」。この経験を元にこれからも挑戦を続ける姿勢だ。

(北海道建設新聞2021年7月10日付3面より)


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