増額は2ダム合わせて約517億円
北海道開発局は16日、2021年度第2回事業審議委員会を開き、新桂沢ダムと三笠ぽんべつダムを建設する幾春別川総合開発事業の再評価をした。北海道胆振東部地震などに起因する自然現象や現場条件の変更、働き方改革に伴う増額が、2ダム合わせて約517億円に上ることなどを報告。委員らは事業費の減額、事業の透明性確保に尽力するよう求めつつ、事業継続は妥当と判断した。
幾春別川総合開発は、1957年に建設した桂沢ダムをかさ上げする新桂沢ダムと、幾春別川支流に新設する三笠ぽんべつダムの整備を柱とする事業。洪水調節と流水の正常な機能維持、水道用水と工業用水の供給、発電を目的としている。
85年度に実施計画調査、90年度に建設事業に着手。その後、石狩川水系幾春別川河川整備計画の策定を経て、15年度に新桂沢ダムの堤体基礎掘削に着手した。翌16年度には新桂沢ダム堤体建設第1期工事を契約している。
今回の事業再評価は、18年9月に発生した胆振東部地震などの自然現象、現場条件の変更などの影響で、事業費の増額と工期延伸に迫られる事態となったため、国土交通省所管事業の再評価実施要項に基づき実施した。
事業内容の変更を見ると、総事業費は約517億円増の約1667億円。増額の内訳は、コスト縮減額との差し引きを含め、新桂沢ダムで約307億円、三笠ぽんべつダムで約210億円となる。自然現象への対策工事の増加、地質などの現場条件変更に加え、物価上昇や働き方改革への対応など、避け切れない要素が多くのしかかった。
工期は7年延伸して30年度までとした。新桂沢ダムは21―23年度に地滑り対策、付け替え道路の整備を進め、23年度に試験湛水(たんすい)をする計画。三笠ぽんべつダムは21年度に本体施工計画などの見直し検討を完了し、本体の着工時期を22年度とする。本体工事の工期は29年度までで、同年度に管理設備を整備し、試験湛水を始める。
委員との質疑は、同事業の総事業費が当初から大幅に増加した点に集中。「自然災害が頻発している今、事業費の想定の仕方を変える必要がある」といった意見や「事業の状況について道民にしっかりと発信し、透明性の高い事業にすべき」と求める声が上がった。
委員長を務める蟹江俊仁北大大学院工学研究院教授は、事業費の縮減と事業の透明性確保に留意するよう求めた上で、事業継続を妥当と結論付けた。
(北海道建設新聞2021年7月19日付1面より)