インフラ整備の裏で果てる命に光
工事のために伐採した木を活用したアート展示「柿本拓哉写真展」が、札幌市中央区のギャラリーNOTHING(RITARU COFFEE内)で開かれている。インフラ整備の裏で果てる命に光を当てている。
きっかけは、北大札幌研究林内の橋の撤去だ。昨年、老朽化を理由に札幌冬季五輪時に建設した橋の取り壊しを決定。それに伴って道路を新設することになり、74本の木が伐採された。
北大科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)特任講師でアーティストの朴炫貞(パク・ヒョンジョン)氏は、廃木を活用した作品展示を目指し、伐採前にバイオアートプロジェクト「アノオンシツ」を発足。昨年9月、切り倒す前の木々をピンクのナイロン糸で結ぶなど、現場をアート作品にした。今回の写真展は同プロジェクトと連携している。
テーマは「翳(かげ)」で、倒されたニセアカシアやイチイなどを暗がりの中で撮影した。チェーンソーの傷跡が残る木目や、皮のめくれ上がった切り株などを壁一面に配し、夜の森にいるような静けさを表現した。
写真家の柿本氏は、どれも道内に多い木々のため、さまざまな地域で応用可能なイベントとし、「普段見えにくいものをあえて見ることで、何かを感じてもらえれば」と話す。
木の展示は20日まで、ポートレートの展示は21日から8月1日まで。
(北海道建設新聞2021年7月19日付14面より)