コロナ禍で公演の中止や自粛が続く音楽業界。道や札幌市がイベント再開に向けた支援を打ち出す一方、感染の収束はまだ見通せない。対応策として公演のネット配信が広がる状況を業界関係者はどう見ているのか。メジャーを含む有名アーティストが数多くイベントを開く札幌市西区二十四軒のライブハウス・ペニーレーン24の菅原織店長(44)に聞いた。(経済産業部・室谷 奈央)
―施設の概要を。
道内のコンサートやイベント企画、制作、運営を手掛けるウエス(本社・札幌)が部門の一つとして運営し、今年で31年目になる。札幌のライブハウスとしては歴史が長く、年月とともに全国に知られるようになった。
最大収容人数は500人と、道内最大級の「Zepp Sapporo」に次ぐ規模で、首都圏の有名アーティストの利用が8割を占める。全国ツアーの北海道会場として使われることも多い。
―現在の利用状況は。
土日を中心に月12本ほど開催しているが、正直とても厳しい。ライブハウスの収入は来場者から得るドリンク代が中心。もうからない業種だと言われているが、収容人数に制限があると一層きつい。
ライブは企画から実施までに最短でも3カ月程度かかる。ほとんど利用がない時期もあったが、20年11月ごろに会場費の補助など行政支援が集中した影響で、2月には本数が一時的に回復した。今では出演者側も可能な限りライブをしようという動きを感じる。
―コロナ禍で音楽の楽しみ方が多様化したという見方もあるが。
地元出演者を相手にする中規模ライブハウスを中心に配信が広まった一方で、映像ではライブの空気感が伝わらず、配信離れが進んでいる。われわれが提供しているのは、その場の空気感や気持ちのぶつけ合いといった形を変えられないものだと、コロナ禍をきっかけに強く感じた。感染症対策を強化することで安全にライブを実施し、本来の楽しみを届け続けたい。
―コロナ禍での対応策を探ろうと関係者が昨年4月に発足した「北海道ライブ・エンタテインメント連絡協議会」の活動を。
連絡協議会では昨年7月にガイドラインを作成、更新を続けている。私も店舗を運営する者として中心となって取り組んだ。同時期にガイドラインに沿った地元音楽家の模擬ライブを開き、函館や釧路など各地の関係者が来場した。
検温や消毒などの感染症対策に準備段階から取り組み、動画を公開したほか北海道医療大の専門家にライブエンターテインメントでの感染リスクと対策について講演してもらった。文章化するだけでなく、模擬ライブをするのは全国的にも珍しく関係者からも好評だ。
―最近の取り組みは。
SNSでの来場者への感染対策のお願いを7項目に絞って告知するようにした。感染を出さないためには、来場者側で対策をしてもらうことも必要だ。例えば施設への行き帰りの過程でも気を付けてもらわなければならない。
コロナ禍をきっかけにライブハウス同士で意見を交換する機会も自然と増えたが、どのライブハウスも感染対策を徹底しながら活動を続けている。来場者、運営側、それぞれが気を配って音楽を楽しむことで、文化の火を絶やさないようにしたい。
(北海道建設新聞2021年7月21日付3面より)