地域振興への活用など決意も新た
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は27日、縄文時代の文化の発展と成熟を示す北海道・北東北の縄文遺跡群を世界文化遺産に登録した。道はじめ関係自治体では幹部職員らが集まり、ライブ配信された世界遺産委員会の審議の模様を見守った。長年の悲願の達成を受けて、関係者は地域振興への活用や確実な遺跡の保全に向け決意を新たにした。(関連記事11面に)
縄文遺跡群は道内6遺跡、青森県内8遺跡、岩手県内1遺跡、秋田県内2遺跡の計17遺跡で構成する。道内の6遺跡は函館の垣ノ島・大船の2遺跡、伊達の北黄金貝塚、洞爺湖の入江・高砂貝塚の2遺跡、千歳のキウス周堤墓群という内訳だ。これ以外に関連資産として森町の鷲ノ木遺跡も名を連ねている。

千歳市のキウス周堤墓群は
祭祀(さいし)、儀礼の充実を示す重要な史跡
道庁赤れんが庁舎では登録が決定した瞬間「やった!」との声の後、一斉に拍手が湧き上がった。鈴木直道知事は遺跡について「未来に継承すべき大切なわれわれの宝。将来にわたって確実に引き継ぐ大切な使命を持っている」と話し、本道の新たな活力となることを期待した。

道庁では鈴木知事らが決定を祝い後世への継承を誓った
伊達市では28日、菊谷秀吉市長ら関係者が市役所正面玄関前に掲げた世界遺産登録記念看板を除幕した。記者会見で菊谷市長は「関係者が長い間支えてきたことが実現した」と感謝。北黄金貝塚公園の今後については「淡々と周辺環境整備を進める」と語った。
洞爺湖町の真屋敏春町長は鈴木知事とのオンライン会談で高砂貝塚公園が完成するなど遺跡整備が一区切りしたことを報告。「幅広い年代に来て楽しんでもらいたい。世界の宝を適切に保全して後世に引き継ぐとともに地域の発展に役立てる」との決意を示した。
函館市は27日、市役所で工藤寿樹市長らが決定を祝った。工藤市長は「東京五輪の最中の登録ということもあり記憶に残るものとなる。自然と共生し、平和に暮らした縄文の精神を広く世界に発信することで地域振興につなげたい」と話した。28日には、整備工事を終え一般公開を始めた垣ノ島遺跡で記念セレモニーを執り行った。

函館市が整備した垣ノ島遺跡。居住地と墓地を明確に分離した
千歳市の山口幸太郎市長は28日の記者会見で「市民や道民に遺跡の歴史的な意義を伝えていく工夫が必要だ。遺跡の持つ意味合いが理解できるよう取り組みたい」と述べ、関係自治体の一層の連携を求めた。市役所庁舎には懸垂幕や遺跡のパネルを飾り、祝賀ムードを演出している。
(北海道建設新聞2021年7月29日付1面より)
北海道建設新聞2021年7月29日付11面には、縄文遺跡群の世界遺産登録に関連して、遺跡周遊観光の促進に向けた278号尾札部道路の全線早期開通を求める動きを取り上げた記事を掲載しています。閲覧は新聞本紙か、e-kensinプラスの記事検索コーナーをご覧ください。