コロナ禍でBCP意識高まる
よねざわ工業(本社・恵庭)は、コンクリートブロックの開発から製造販売、外構や住宅の設計・施工までを手掛ける会社。3月に社長交代があり、米沢悟さんが父の稔さんから引き継ぎ3代目に就いた。「当社の製品は主役ではない。しかし街の景観を整えて顧客の心安らぐ空間を提供するほか、街や住宅そのものの魅力をより引き出す製品でありたい」と話している。
1952年、樽前アッシュブロック企業組合として創業。その後、樽前ブロックに社名が変わり、75年に恵庭ブロックと合併し「株式会社よねざわ工業」を設立。創業メンバーの祖父・勝義さんが初代社長に就いた。
北海道トップレベルの商品ラインアップと自社物流網を強みとする。恵庭市戸磯と島松沢に広大な工場を持ち、外構で使うブロック塀やガーデニング用の土留め、舗装のインターロッキングブロックを製造する。運輸会社の樽前工業をグループに持ち、自社物流網を中心とした配送ネットワークで道内をカバーする。
米沢悟さんは78年8月生まれ、千歳市出身。酪農学園大を卒業後、2006年によねざわ工業に入社した。取締役に就いた07年ころ、父の稔さんから事業承継の意思を聞かれ、「やってみたい」と答えてから、経営に対する勉強の毎日だった。11年に小樽商大大学院のMBA(経営学修士)を取得し、時を同じくして常務取締役に就く。
20年の副社長就任は1年後の社長交代に向けた前哨戦で、いわば経営者になるための最終段階だった。「コロナ禍は計画通りにいかない。だからこそ計画と実績とのギャップの原因がはっきりと分かる」と考え、〝位置を知る〟という経営スローガンのもと、次世代を担う中堅や若手社員と共に中期経営計画を策定した。人、製品、財務、情報、ブランドの5視点から構成され、21年度から実行されている。
BCP(事業継続計画)を重要視する。「BCPは一気に実現できず、事業承継の過程と重なる部分がある」と悟さん。3年前から問題点を一つずつ洗い出し、計画的に実行。19年は経済産業省の事業継続力強化計画企業に認定された。もともとは大地震など自然災害への備えから体制を整えたが、20年の新型コロナウイルスによって意識は一層高まった。
「コロナ禍のBCPは社員と家族の健康・命はもちろんだが、感染リスク管理と社会的責任のバランスが重要。うちは原料調達からアフターフォローまで一貫しているのが強みだが、材料比率にしたら0.1%程度の原材料がコロナ禍の輸入難から手に入らず、重要事業のブロックを製造できない窮地に追い込まれた」と。会社の存続が危ぶまれる出来事で、代替の調達先をつくらなければと実感した。
大切にしている言葉は「育根達枝(いくこんたっし)」。立派な樹木を育てるには根が太く良く育つことが重要で、地味ながら愚直に育成し続けないと、枝や葉に栄養が行き渡らず、美しい花や大きな実はできないという考え。自社は樹齢68年の成木で、創業100年に向け北海道にしっかり根付く大樹になりたいと考えている。
スキルの高い全従業員60人余りへの尊敬の念を忘れない。「心強い経験豊富な従業員に加え、若い従業員が少しずつ増え、みんなが活発に意見を言える環境になってきた。社員みんなで共に踏み出したい」と力を込める。
(北海道建設新聞2021年8月2日付3面より)