新型コロナウイルスはたびたび、集団感染、すなわちクラスターを引き起こします。春までは接待を伴う飲食店、病院、高齢者施設でのクラスターの発生が目立っていました。そこで、飲食店への営業時間短縮や休業要請を行い、飲食店での発生は少なくなりました。さらに、医療従事者と高齢者へのワクチン接種により、病院や高齢者施設での発生はほとんどなくなりました。しかし、学校、そして会社、事業所での発生が目立ってきました。やはり、ワクチン接種が現役世代や若年者に行き渡っていないからなのでしょう。
学校でのクラスターは、部活動やサークル活動などで起こっています。狭い部室や更衣室での密集、仲間同士で一緒に行動することなどが原因と思われます。
一方、会社、事業所での原因は何でしょうか。第一に挙げられるのは、オフィスの換気不足です。今のビルは冷暖房完備ですが、実際にはあまり外気を取り入れる仕組みになっておらず、室内の空気が循環している形が多いのです。
したがって、ひとたびウイルスがミクロ飛沫(ひまつ)となって室内に広がると、エアロゾル感染を引き起こします。この場合、アクリル板などの仕切りやついたては全く効果がありません。お茶や喫煙などでマスクを外すと感染の危険性が高まります。
そして、昼食に問題があることが分かってきました。もちろん、昼食を外の飲食店で取る場合は、それなりのリスクになります。しかし、飲食店は感染対策が取られているところが多く、滞在時間が比較的短いので、昼食を原因とするクラスターの報告はありません。
リスクが高いのは、オフィスで取る昼食です。先に述べたように、換気が良好でない状況なので、自席で食事をしていても、マスクを外していますから、リスクになります。
休憩室などに移って昼食を取る場合も多いと思いますが、休憩室は概して狭く、隣接した状態で複数の人が、マスクを外して食事をすることになります。気も緩んで談笑してしまうことも多いでしょう。愛煙家は昼食後に一服したくなり、喫煙ブースへ。リスクはさらに高まります。
現状で感染リスクが一番高いのは、ずばり、オフィスです。すでに起こっている感染第5波が最悪になるかどうかは、オフィスの感染対策にかかっています。テレワークや休業も視野に入れてください、社長さん。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)
(北海道建設新聞2021年08月11日付3面より)