本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(11)透明なごみステーション

2021年08月18日 09時00分

 その日は午前9時に工事が始まるので、早めに車を出しました。出勤時間帯にあたり、道路が混雑すると予想したのですが、コロナ禍の在宅勤務が定着しているのか道はゆるゆるで、予定よりかなり早く到着してしまいました。

 現場から少し離れたところに車を止め、ぼんやり対向車線側の歩道を眺めていると、黒っぽい箱のようなものが見えます。スマートフォンで撮影し拡大すると、中に黄色いものが入っています。黒っぽい箱の正体はごみかごでした。打ち合わせで何度も出向き、前を通っていたにもかかわらず、私はこのごみステーションの存在に全く気付いていなかったのです。

 時間に余裕があったので、コンビニコーヒーの調達を兼ねて周辺をぐるっと一回り。この町内のごみステーションは、黒い折り畳み式のごみかごが設置されています。この日は燃やせるごみの日だったようで、札幌市指定の黄色いごみ袋が入っていました。

 違う時間帯に通ると、ごみかごは畳まれて、塀に立て掛けてありました。黒いかごは仕事中はしっかりごみ袋を抱え、役目を終えると静かに次の出番を待っています。

 ちなみに、私が住む地域のごみかごは市指定のごみ袋と同色の黄色で、仕事中も終了後も「私ここにいます」と主張しています。近くの町内では緑色のかごを使っているところもあります。周囲の草を意識した選定かもしれませんが、かごの緑は草の緑より鮮やかです。秋の終わりから春先までの存在感はなかなかです。私がそのかごを使うことはありませんが、場所はしっかり把握しています。

 ごみステーションは決まった人しか使いませんし、収集してくれる人たちがここを見落とすことはありません。ごみステーションの場所を示す印として、ごみかごを目立たせる必要はあるでしょうか。

 街並みは建物だけでなく、交通標識、屋外広告物、サイン、バス停、街路灯などが、必要な場所に配置されています。その色彩は目立つべきものから、風景になじむものまでさまざまです。

 交通標識は安全を確保するため、はっきり分かるように高彩度の色が使われています。一方、街路灯はどうでしょう。街路灯の役割は夜間の明るさを確保し、歩行者や車の安全を守ることです。極論を言えば、明るくなるのであれば、柱の部分は「見えなくてもよい」のかもしれません。でも、柱が無くては光源は取り付けられませんし、電気を通すこともできません。

 この「見えなくてもよい」ものは無色透明が理想ですが不可能なので、できるだけ風景になじむような色彩が求められます。

 さて、ごみステーションは目立った方がいいのか、それとも風景になじんだ方がいいのか-。実は風景になじむ色のかごの方が、中に入っている物の存在がよく分かります。かごが働いている時はごみが入っていることを主張し、待機している時は街並みに溶け込んでいてほしいと考えますが、いかがでしょう。

(北海道建設新聞2021年8月12日付3面より)


本間純子 いつもの暮らし便 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

  • 北海道水替事業協同組合
  • 川崎建設
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

セントラルリーシング、千歳に複合レジャー拠点
2023年02月24日 (19,958)
イオン新店舗周辺の3路線を改良 室蘭市が24年度着...
2023年02月24日 (12,303)
真駒内地区義務教育学校、24年秋ごろ着工
2023年02月27日 (5,106)
ラピダスが千歳に半導体工場建設へ
2023年02月27日 (4,472)
来場者の五感を刺激 エスコンフィールド内覧会で実感
2023年03月11日 (3,898)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓 new

おとなの養生訓
第251回「マスクの使い方」。換気がよい戸外ではそろそろ外しても大丈夫です。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第30回「春を待つ街路樹」。街を彩り、運転をしやすくする、景観のお助けアイテムとも言えます。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第28回「『学び直し』の機会提供」。職場内の意識が改革され、多様性が取り入れられます。

連載 北海道開発事業費
見え始めた未来像
2023年度

迫る巨大地震
2023年度の北海道開発事業費を検証しながら、本道建設業の課題を整理する。