1935年に室蘭港で創業した楢崎造船所を前身とする建設業。主力となる橋梁製品の4分の1を占める合成床板は、道内で発注される鋼橋の7割で採用され、各メーカーがしのぎを削る。
ものづくり創出支援の「開発の芽育成支援事業」で取り組むのは合成床板の非破壊検査方法確立。合成床板は工期が短く、RC床板に比べライフサイクルコストは2倍の長さがある一方、下面が底鋼板で覆われているため内部コンクリートの状態を把握することが難しい。

西村さん(左)と佐藤孝信技術開発課長。完成した合成床板の前で
ハンマーで底鋼板の複数箇所をたたき、打音により異常を検知する今の橋梁点検方法は経験が要求される。そこで橋梁点検の方法として溶接部を検査する際に使う超音波探傷の技術を応用して作業を簡便化し、客観的な数字を示すことで補修の時期や方法を明確にする。メンテナンスコストの最小化につなげる考えだ。
室蘭工場長と企画室長、技術開発室長を兼務し、事業の責任者を務める西村公利さんは「探触子を当てることで空隙(くうげき)により内部にたまった水などを検知する。製品の長寿命化に貢献できればと考えている。将来的にはこのメンテナンスの技術と組み合わせることで合成床板の拡販につなげたい」と話す。
今は超音波の発信を工夫するための実験を進めている段階。今後もデータを収集しながら装置に改良を加え、年度内に理論的な手法の確立を目指す。
「新設橋梁数の減少が顕著となり今後、維持管理は確実に増える。当社で点検事業をする予定はないが、間接的な形でも技術を普及させたい。もともとグループ会社の横河ブリッジが取り組んできた研究を引き継いで進めてきた。技術の確立は合成床板のメーカーとしての責任でもある」
西村さんは橋梁設計に長く携わってきた技術者。阪神・淡路大震災で被災地に赴き復旧に携わった経験を持ち、道内には自ら手掛けた橋がある。「自分の設計した橋がインフラとして使われているのはうれしい」と笑顔を見せる。
(北海道建設新聞2021年8月2日付11面より)