後遺症とは、ある病気が起こり、その病気の原因とそれによる症状は治まったあとに、体の働きに支障がある症状が残っていることを指します。病気は必ず体の一部が壊れるような反応が起こっています。いわば、外から見えないけれども傷を負った状態といえます。病気が治るということは、この傷が癒えていくことを意味します。しかし、傷が完全に治らず、傷がいつまでも残る場合があります。さらに傷が治っても、傷跡が残って、何かの拍子にそこが痛んだりすることもあります。後遺症は治りきらない傷や傷跡によっておこる障害といえます。
新型コロナウイルス感染症は、最悪、死に至る恐ろしい病ですが、病気が治ったのちも、さまざまな後遺症が残るという、とても厄介な感染症でもあるのです。かぜで後遺症が起こることはありませんし、インフルエンザで後遺症が残ることもほとんどありません。でも、新型コロナの場合はかなり高い確率で後遺症が残ることが分かっています。
なぜ、新型コロナで後遺症が残りやすいのか、詳しいことは未解明です。ただ言えることは、新型コロナに感染すると、強い炎症が引き起こされ、高熱が出ます。この強い反応により体のさまざまな場所が強く傷つくことになります。したがって、ウイルスが消えた後に、傷の治りが悪くなったり、大きな傷跡が残ったりするので、後遺症が起こりやすいと考えられるのです。
新型コロナの後遺症はさまざまなものがあります。肺をひどく壊すので、肺に傷跡が残り、息苦しさや呼吸のしにくさがいつまでも残ります。ちょっとした運動ですぐに息切れするようになります。胸の痛みが残る人もいます。鼻や舌の粘膜に強い炎症が起こるので、においや味が分からなくなりますが、これも粘膜や神経がかなり傷つくので、なかなか戻りません。
においや味が分からないと食べ物をおいしく食べられないので、食欲不振となり、栄養状態が悪化します。新型コロナは神経そのものにも傷を残します。そのため、頭痛が続き、さらに脳の働きが障害され、物覚えが悪くなったり、気力がわかなくなったりして、倦怠感から寝たきりに陥ってしまう人もいます。こうなると、仕事や学業に復帰することは不可能です。
この後遺症は、むしろ病気自体が軽症であった人に目立つといわれます。「コロナはかぜ」なんて馬鹿なことを言う人がいますが、罪深い、無責任な人です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)