行政書士池田玲菜の見た世界

 アンパサンド行政書士事務所の池田玲菜代表が、行政書士の視点から連載するコラム。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第1木曜日に掲載しています)

行政書士池田玲菜の見た世界(11)休業要請と従業員

2021年09月03日 09時00分

 新型コロナウイルス感染症の拡大を予防するため、飲食店や大型商業市施設に対し、休業や時短営業が要請されています。要請を受けた会社では、当該要請に従い、店舗を休業し、感染拡大に取り組んでいます。従業員も働く場所がなくなり、休業をやむなくされています。

 本来、勤務をしていない従業員に対して会社は給料を支払う必要はありません。しかし、会社都合で生じた休業については、異なる取り扱いがされています。製造業で原材料が届かなかったり、業務を受注できなかったために休業となった場合のように、会社が業務を提供できなかった場合、会社側は、勤務をしていない従業員に対しても平均賃金の6割以上の補償を支払わなければなりません。

 自治体からの休業要請は、多くの場合は「会社都合での休業」には該当しないと考えられます。会社が事業を休業させよう、休業させなければならないと考えたわけではないからです。そのため、従業員の休業に対して補償である休業手当を支払わなくても問題はありません。しかし、その論理を貫くと従業員が退職してしまうこともあるため、休業手当を支払っている会社も多くあります。

 休業手当に対しては「雇用調整助成金」および「緊急雇用安定助成金」という助成制度が整えられており、コロナ禍においてその助成は拡充されています。会社が従業員に対し6割以上の休業手当を支払うと、支払った金額の9割、状況によっては全額が助成されます。

 会社としては、従業員の新規採用コスト、教育・研修コストと比較すると、退職者数を減少させ、雇用を維持させた方がよいと考えます。働いていない従業員の会社負担分の社会保険を負担しながら、雇用を維持してきました。

 ところが、長引く休業期間に耐えられず、退職をする従業員が後を絶たないようです。ある調査会社のアンケートによると、飲食店における従業員減少の理由として、コロナ禍による解雇(会社都合の退職)より従業員都合の退職の方が多く挙げられています。そのアンケートでは休業手当の支給の有無は聞かれていないので一概には言えませんが、休業手当を受け取っていても、すなわち自由な時間を確保し、働いていた時と同等の金銭を手に入れていたとしても、退職を選択する人は多くいるようです。

 弊所のお客さまの飲食店でも同様のことを聞きます。「このままでは、コロナの影響がなくなった後でも、飲食店で働いてくれる人がいなくなっちゃうよ」という嘆きも聞きました。会社の将来性に不安を感じた退職に限らないのだと思います。

 働く場所というのは、お金とともにお金以上の何かも提供しているのだとあらためて認識しました。

(北海道建設新聞2021年9月2日付3面より)


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