五輪で注目、都市型スポーツ 競技層拡大へ施設確保が必須

2021年09月06日 10時00分

関連用品売り上げ好調、教室問い合わせ増 練習場所は不足

 東京五輪の盛り上がりや日本人選手の活躍を受け、スケートボードやスポーツクライミング、自転車BMXといった都市型のスポーツが人気を高めている。競技を始める人は増え、道内では関連用品の売り上げが好調だ。一方、競技用の公共施設が足りないとの声もあり、競技層の裾野を広げて将来的な選手育成を促すためにも施設確保が求められている。

 東京五輪で計5つのメダル獲得が話題になったのはスケートボードだ。街中のようなコースで技を競う「ストリート」と、くぼ地状の曲線的なコースで技を競う「パーク」の2種目となっている。

 ムラサキスポーツ(本社・東京)のイオンモール札幌発寒店では、自粛期間で伸びた人気を五輪が後押し。関連用品の売り上げがコロナ禍前と比べて倍増した。10―20代の若者を中心に注目度が高い。

HOTBOWL skatepark

10―20代の若者を中心に人気が高まっている
(HOTBOWL skatepark提供)

 パーク女子で銀メダルを獲得した開心那選手の所属先でもある屋内スケートパーク「HOTBOWL skatepark」(札幌市北区)では、初心者向け教室への問い合わせが相次いだ。高木啓吾店長は「五輪を契機に興味を持つ子どもたちが増えた一方、整備された広い練習場がほとんどない」と、練習施設の少なさを指摘する。

 日本スケートパーク協会(東京)によると、道内の公共スケートパークは7施設。札幌市にある3施設のうち路面の傷みなどで実質的に使えるのは西区の五天山公園1カ所のみで、不足が課題だ。条例で利用が禁止される大通公園などで練習する人もいるという。

 市は面積確保や騒音の懸念から郊外に練習施設新設を計画。五天山公園のスケートボード場を管理する北海道アクションスポーツ協会(札幌)と連携して慎重に進める考えだ。

 BMXも事情は似ている。オフロード自転車に乗ってジャンプや回転など技の難易度などを競う「フリースタイル」と、速さを競う「レース」の2種目からなる競技だ。

 札幌市内のBMXショップ「ウィリーズ」の小野拡オーナーによると、コロナ禍や五輪の影響で、競技を始める人は中高生を中心に少しずつ増えている。

 一方、競技を楽しめる専用の公共施設は札幌市内にほとんどなく、南区の真駒内川緑地に整備されたコースだけだという。地面は土のためコンディションは雨雪の影響を受ける。ある愛好家は「豊平区の河川敷など街中に練習場ができてほしい」と要望する。

 市内には民間施設も数カ所あるが、場所によってはスケートボードなどと併用で混む曜日や時間帯もあるという。

 特別な道具が不要で、手軽に始められると注目されるのはスポーツクライミングだ。五輪では高さ15mの壁を登る早さを競うスピード、高さ4m程度の壁を制限時間内にいくつも登るボルダリング、制限時間内に登った地点の高さを競うリードの3種目が繰り広げられた。

 中でもボルダリングはレベルに合わせたコースを設定して誰でも楽しめる。NAC札幌クライミングセンターは五輪の影響で20―30代を中心に利用者が倍近く増えたという。

 道内には民間17件、公共5件のクライミング施設がある。他にもレジャー施設やスポーツクラブ内にボルダリング壁を設置している場所は多い。

 しかし、選手の支援や強化を担う北海道山岳連盟クライミング委員会(札幌)では施設不足を指摘する。道内にある施設の多くがレジャー目的のボルダリング用だ。高さ12m以上などリード競技の基準を満たす施設は札幌市豊平区の「北海道立総合体育センター(北海きたえーる)」と「美唄市体育センター」のみ。スピード競技では道内に1つも専用設備がない。

 特にコロナ禍で体育館がワクチンの集団接種会場となるほか、道外施設の利用も難しく深刻な状況だ。道山岳連盟の山納秀俊競技委員長は「北海道は競技施設の面で後れを取っている。選手育成にも影響を与えるため、拡充をお願いしたい」と話している。

(北海道建設新聞2021年9月3日付3面より)


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