玉川組(本社・恵庭)と今日和(同・札幌)は、札幌市内の道路修繕工事でGNSS(全球測位衛星システム)を用いた路面切削システムを導入した。路面切削機の水平位置をGNSSで特定後、現況と設計データを照らし合わせながら、切削厚さを自動制御する3Dマシンコントロール技術。オペレーターによるマニュアル操作と同等以上の精度で作業でき、切削オーバーレイ現場などで省力化や安全確保の効果を出せることを確認した。両社によると、GNSSを用いた路面切削工事は同現場が道内初だという。
札幌開建発注の国道12号札幌市厚別東舗装補修ほかで試行。全3工区のうち、GNSSを用いた路面切削は国道5号手稲区稲穂の手稲工区(延長530m)で、8月24日から30日にかけて進めた。
トプコン社製の3Dマシンコントロール路面切削システム「RD―MC」を、酒井重工業のロードカッター「ER552F」に取り付けて施工。セットアップはニシオレントオール北海道(本社・大阪)が協力した。
現況面の点群データを基に玉川組の技術課が設計データを自社作成し、切削機に取り込むことでGNSSの位置情報を確定した。試行の結果、プラスマイナス3㍉の精度で切削できた。出来形管理基準のマイナス7㍉を網羅するほか、玉川組が社内規格に設定するプラスマイナス4㍉の精度以上での作業が可能だ。
従来、3Dマシンコントロールを使った路面切削工事は、複数台のトータルステーション(TS)を施工箇所に設置し、専任者を配置しながら自動追尾させるなど手間が課題だった。GNSSを用いた路面切削工事はTS設置の手間や通信障害の心配がないほか、オペレーター1人で済むため経済性や施工性で優れる。
オペレーターによるマニュアル操作の従来工法と比べても、箇所ごとの切削深さを指示する路面マーキングが不要になり、工程の短縮が期待できる。マーキングの指示内容を確認するため現場内を行ったり来たりする必要がなくなり、機械周りの安全確保でもメリットがある。
玉川組の社内検証では、省力化はTSシステムと比較して60%、マニュアル操作の従来工法とは76%の効果があったと試算する。作業時間はTSシステムと比べ25%、従来工法より36%短縮できたとみている。
現場代理人を務める三戸達也工事長は「夜間の道路修繕は交通開放の時間制約もあって、ICT施工を取り組むこと自体が難しかった。今回のRD―MCの実証から、従来工法と変わらず品質を確保できることが分かったため、今後も活用したい」と話す。
今日和の河村寿幸社長は「将来の担い手確保の課題が叫ばれる中、熟練度の満たないオペレーターでも、均一な精度の仕上がりを顧客に提供できるのは強み。路面切削会社としてのi―Constructionへの寄り添い方を模索中で、今後も研究を重ねたい」と話している。
(北海道建設新聞2021年9月6日付3面より)